遠く突き抜けるように蒼い空は、すっと線を描く白を伴っていた。
じわじわとその飛行機雲が蒼に溶ける。分解された白がゆるりと消えていく様を、俺は見ていた。

温かな風が草木を揺らしてざあざあと心地よい音を立てる。
遠くできゃっきゃと子どもたちの笑い声がする。
花の蜜がふわりと香って、俺は身体に描く景色の心地良さに暫し瞳を閉じた。

頬に当たる太陽は、何て温かいのだろう。

「クラウドーー!」

まだ幼さの残る声が聞こえて釣られるように顔を向ければ、一面タンポポの花畑の中央でマリンが大きく手を振っていた。

「クラウドーなにしてるのー?」

少しだけ距離があるせいか、マリンは両手で口元を筒状に覆って声を上げた。どうやら全身を使って声を出しているようで、肩が大きく上下している。

「いや、なんでもない」
「なーにー?聞こえないー!」

そう言ってたたた、と小走りに駆け寄って来るマリン。
彼女の走った跡ではカサカサと草木が擦れた音を鳴らし、所々で陽に反射した水滴が葉の上でキラキラと光った。

「あっ!ティファー!」

マリンが駆け寄ってくる途中で俺を追い越して手を大きく振った。満面の笑顔にマリンの嬉しさが伺える。
振り返ればペンションを出てきていたティファが、こちらに向かって手を振っていた。

「クラウドーっマリンーっ!もうすぐ始めるよー!」
「はあーい!」

いつの間にか俺の傍までやって来ていたマリンがティファに向かって声を上げて、ぎゅっと俺の手を掴んだ。

「クラウド、行こっ!」

にこっと笑ったマリンが俺の手を引く。小さな手の平は思ったよりも力強くて、俺の中心が少しだけぐらりと動いた。

「ケーキ、作ったんだよ。わたしも。喜んで、くれるよね?」
「…ああ、きっと」

俺はマリンの手を少しだけ強く握り返した。

「クラウドーっマリンーっ!早くー!」
「あっ!デンゼルー!」

いつの間にかデンゼルがティファの横に出てきていて、俺とマリンに向かってそう言った。

デンゼルだけではない。
扉を背に、ヴィンセント、ユフィ、バレット、シド、ナナキ、ケット・シー。
皆が笑いながら俺たちを見ている。

−そう、今日は、彼女の。


ぶわっ、突然強い風が吹き、それに煽られてタンポポの花弁と綿毛が空に舞い上がった。

青空にゆるゆると、吸い込まれる。



命を、青に、溶かしていく。





ふと左手に強く感覚を感じて振り向くと、マリンがギュッと手に力を込めていた。

「おねえちゃん、かな?」

語尾の途切れる言い方に、ぐらりと彼女を思い出す。小さな少女にあの彼女が重なって、俺は言葉を失いながら瞳を瞬いた。そしてゆるりと答える。
そう、なんとも、自然に。

「そうかも、な」

俺の返答にマリンがにこりと笑顔を作った。
それが俺をやけに嬉しくさせる、変な話だ。

それもこれも、きっとこの世界がこんなにも綺麗なせいなんだと、無条件に思う。

「行こう。今日は、特別な日だ」
「うん!」

俺とマリンはそう言って、また、仲間たちの元へと歩き出した。





なあエアリス。見てるか?

あんたが守ったこの世界は、


こんなにも綺麗だ。




Beautiful world

〜happy birthday Aerith〜

繋がり続ける、ずっと。






110207



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エアリスお誕生日おめでとう!
あなたの守った世界は、これからもいのちを繋げていきます。

みんな大きな流れの1つ。
ずっと繋がる世界に、感謝を。

ありがとう!(*^o^*)








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