※ザクエア+クラ






視界ゼロの世界から、ゆるりと瞼を持ち上げる。
未だガタガタと揺れているような肺に、少しだけ違和感を感じた俺は澄んだ空気を慌てて吸い込んだ。

「クラウド、気分は大丈夫か?」
「ザックス。うん…大分良くなった、ありがとう。…けど、俺のせいで予定狂っちゃったな、ごめん」
「そんなのいいって!体調を治すことの方が大切、なっ!」

ザックスはそう言って笑い、俺の左隣にドカッと座った。
今、俺達はミットガルから任務地へと移動中なのだが、俺が持ち前の…所謂…乗り物酔いというやつを発症してしまい、こうやって少し休憩を挟んでもらっているのである。

(はあ…いい加減、俺も情けないな…)

俺は自分の不甲斐なさに長い溜め息を吐いた。
そんな俺を元気付けようとしてくれたのか、ザックスは俺の肩をガッと抱き、明るく言った。

「まだまだ始まったばっかだろ?そんな落ち込むなって。ドンマイドンマイ!」
「…うん、ありがとう、ザックス」

ザックスは強くて優しくて、そして酷く大きい。俺の理想を固めたような人だなとよく思う。
一度ザックスと会って話した人は、皆彼を慕い、惹き寄せられて集まるのだ。

さらさらと目の前を流れる小川の反射光に目を預ける。澄んだ水の中に魚が2、3匹程透けて見えて、俺はそれらが泳いでいくのを目で追った。

「空、綺麗だよなあ」

不意にザックスからふらりと投げ出された言葉。
沈黙に噛み合わないそれに、俺は妙な気分になった。

「うん、今日は晴れてるからね。いい天気だ」

俺は小川から目を外し、今度は空を仰いでそう返事をした。

「…だよなあ」

どこかぼんやりとしたザックスの言葉に違和感を感じて、俺はちらりと隣を盗み見る。
しかしザックスは太陽の光を遮るように腕を上げて顔に陰を作っており、表情を読み取ることが出来なかった。

「空って、綺麗で、吸い込まれそう、だよなあ」
「うん、そうだね。でも、何だか不思議と、吸い込まれてもいいような気になる。温かそうだ」

俺がそう言うと、ザックスは驚いたような顔をしてこっちを見て、数秒沈黙した。

「…ザックス?」

次の瞬間、ははっとザックスは声を上げて笑って「俺も同感!」と言いながら俺の肩をポンと叩いた。

「なあクラウド。俺、見せたい子がいるんだ。この景色をさ」
「え?…う、うん」

唐突に切り出された話題に、俺は少し戸惑いながら首を縦に振る。

「こんなに綺麗なんだ。きっと気に入るよな!」

そう言ったザックスがやけに嬉しそうで、俺は何だかよく分からなかったけれど、釣られて笑ってしまった。
太陽はポカポカと俺の背中を暖めていて、俺は何だかすごく嬉しかった。


二人で見た遠い青空は、とても綺麗だった。




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すぐ傍で新型エンジンの搭載されたハーディ=ディトナの規則的なアイドリング音が、まるで静寂の中に取り残されたように響く。
俺は目の前で途切れたハイウェイに足を止め、暫し遠い空を見つめていた。
そしてそのまま、ふらりと隣にいる彼女に声を掛ける。表情は見ない。何となくその方がいいような気がした。

「エアリス」
「…うん?」
「初めて見る空は、どうだ?」

目の前に視界の隅々まで広がる雄大な空。途切れた雲は白い鳥を引き連れて優雅に泳いでいる。

「えっとね、大きい。大きすぎて…、吸い込まれちゃいそう、だね」
「……」

そうか、と言おうとした俺の言葉を遮って、エアリスは「でも」と付け足した。

「…すごく、綺麗」

ぱっとその声に弾かれるようにして振り向けば、同じように振り向いた翡翠とぶつかった。
そして彼女はにこっと嬉しそうに笑う。それが俺は何だか酷く嬉しくて、けれどそう言ってくれることが俺には何となく分かっていた。彼女ならきっとそう言ってくれると思った。だって。
だって今日の空は、あの日の空ととてもよく似ているから。

(こんなに綺麗なんだ。きっと気に入るよな!)

継いだ果てが元より貴女なら

幾らでも届けたい、彼の願いを


ぼやりと見えたものは一秒にも満たない間に消え、重く思考が渦巻いた。余りの重さに頭を押さえる。けれど不思議と怖くはなかった。

ちらり、空を仰いだ横顔を覗けば、隣の彼女は何故だかいつもよりも少しだけ幼いような、そんな気がした。


110309

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奈々希さんへ捧げます、「CCFF7でザクエア+クラ」でした!
クラウドにザックスの記憶が混ざるような、そんな感じを出してみたつもり…です><;

リクエストありがとうございました!








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