薄い微睡みの中でゆるゆると瞳を開ける。入り込む白い光に一、二回瞬きをすれば花達が光のヴェールに包まれながら咲き乱れているのが見えた。
澄んだ酸素に少し冷えを感じて温もりを求めれば、すぐ近くに求めていた彼の手があって、私はその手をゆるく握った。

(温かいなあ、ザックスの手)

耳元ですうすうと彼の寝息が聞こえる。彼の肩に預けた頭を少しだけ動かし身をよじれば、座っているベンチが小さくぎしっと軋んだ。
そして私はまた、眠りの世界に誘われるようにして瞳を閉じる。爪先からぬるま湯に浸かるような温かさ。これがきっと幸せというのだろう、なんて思いながら。



*********


ぎしっとベンチの木の音がして、俺は微睡みの中でゆるく瞳を開けた。目の前に見える、彼女がいつも世話をしている花達が段々と輪郭を取り戻す。溢れんばかりの光がカーテンのように天井から注いでいる。なんて綺麗な景色なんだろう。

ふと左手に温もりを感じて視線を動かせば、空気をゆるりと含むように握られた自分の手。彼女の細い指が、自分の指の間を埋めている。

(………!?)

俺は少し驚いて目を見開いた。けれど自然と笑みが零れる。

(………あったかい、な)

きゅう、とその手を握り返すと、幸せに胸がじわりと滲んだ。不意に彼女から香る、甘くて優しい、透明な香り。

(あ…これ、)
(俺があの時あげた…)

ふわふわと舞うコロンの香りに包まれて、俺はまた緩やかに瞳を閉じた。
左手に包んだ幸せを、その身に小さく感じながら。


――――――――


どのくらい経っただろう。しばらくして、もぞもぞと肩越しに動く気配。俺はすうと瞳を開けて名前を呼んだ。

「エアリス?」
「…うん?」
「起きてる?」
「うん」
「え、いつから?」
「ついさっきから、だよ。ふふ、ザックス、寝顔可愛かった、よ?」
「んな!!」

悪戯っぽい口調でそう言って、彼女は隣で俺の肩に頭を預けたままクスクスと笑った。彼女と触れ合っている肩から俺にも振動が伝わってくる。

(くう…まだ笑ってるなーエアリス〜)

俺は恨めしい目でエアリスを見やるが、相変わらず彼女はクスクスと笑っている。

(!!そうだ!)

「なあ、エアリス」
「ふふふ…なぁに?」

俺は彼女が恥ずかしがる顔が見たくなって、悪戯っぽく言った。

「エアリス、いい匂いするな〜」
「!!」
「なになに?どこで買ったの〜?」
「……!!んもう!ばか、ザックス!」

俺の肩から頭を外し、プイと顔を背けてしまった彼女を見て俺は「ごめんごめん」と笑った。
しかしエアリスは余程恥ずかしかったのか、なかなか振り返ってくれようとしない。

(…ほ、本格的に怒らせた…?俺)

少しだけ不安を感じてドキドキしながら、おそるおそるエアリスの顔を覗き込めば、そこには真っ赤に頬を紅潮させたエアリスがいた。

(ちょっ、反則…!!)

余りの可愛さに咄嗟に彼女を腕の中に閉じ込めれば、驚いた彼女が小さくきゃっ、と声を上げた。


diamond duzzle
(やばいって、可愛すぎるから!)






110211


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どかーーん\(^o^)/
あおの恥ずかしキャパシティが崩壊しました恥ずかしい…!

パン吉様に捧げます「甘甘なザクエア」です!
果たして甘甘になっているのかどうか不安なところですが…すみません…!
お気に召して頂ければ幸いです><
リクエストありがとうございました!








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