しばらく海鳴りのする海を眺めてきた。
幼少のころからずっと慣れ親しんできた海。
今はたまにしか行けなくなったけど、今回は手術前にどうしても見たくて。見ておきたくて。
冬の海の前では、私は素直な小さな一人の子どもになる。
幼いころからの大切な思い出がぽつぽつ思い出されて来て、あの頃に戻りたいような、またここに生まれてやり直したいような、泣きたくなるような、そんな気持ちになる。
気持ちが素直に、洗われたようになった私は、いつかあの世に行くときにはまたここに戻ることになるのかもしれないな、とぼんやり思いながら、大きく海の空気を吸って、これからやらなければならないものに向かう決意をして車に乗り込んだのだった。
そんな正月。