「ボースさん・・・」

彼女に声をかけられた。


大規模百貨店の駐車場。


彼女、何かふらふらしている。

彼女は私の業務に関係する支社の方で、先程まで近くの会場で行われた支社統合の調印式で一緒だった方。
調印式では祝賀会もあったけど、飲酒してなかったはずだ。

でもふらふらしている。


「どうしたの?、大丈夫?」

私が聞くと、連日多忙で疲れがたまっていて大変だという。

「ほんと、疲れがたまっている感じだよ。仕事は騒ぎながら、周囲にグチったり助けを求めたりしてやった方がいいよ。」

私は言ったが、彼女は「はい・・でも、むだだと思う・・周囲は助けてくれないんです」と答えた。


その後、私はいろいろ彼女を励まそうと試みた。

でも、元気がなかった。

ほんとに疲労困憊といった感じだった。

私の目の前40センチにいる彼女はとても、とても小さく見えた。

何か、とてもかわいそうに見えた。


「ボスさん、何かあったら頼みます・・」彼女は言った。


「えーっ、大丈夫だよー、とにかく、気持ちをしっかり持って、何かあったら言ってよ」


私はなぜかしら手をさしのべて、彼女と握手をした。
パワーを込めるように。



彼女と別れ、駐車場から出て、なにかむしょうにまた気になって、車をとめ、振り返った。

彼女の車はあるはずがないけど、気になって。


やっぱりなかった。


車の横に販売機があった。

私はメッツのグレープを買い、車に戻った。


彼女が元気になるように、エールを送るようにメッツを開けた。