画像は私が気に入っているホテルのお寿司やさんのお寿司です。(今回の記事とは無関係です。)


今日は先日、土曜日にあった出来事について書きかけていた記事がありましたので、最後まで書きますね。


さて、先日の出来事です。

私は親戚のおばあさんが体調がわるいというので、頼まれて、運転手としてその付き添いの方とともに車でちょっと遠くの個人病院にお連れしたのですがね。


病院はちょっとこんでいて、受診が終わると13時すぎていて。

で、お昼ごはんは病院のすぐ近くにあるお寿司やさんにすることにして、私がそのお店に行って、中でおばあさんとその付き添いの方が薬局の調剤が終わるのを待つことにしたのです。


お寿司やさんは個人経営で極めてふつうのお店です。
中には一見温厚そうに見える、そう、芸能人で言えば漫画家の「えびすさん」のような人相、それを中肉中背にした、短髪の、歳にして58、9の店主が一人、省エネで小上がり以外の電気を消した店内、カウンター中におりました。

小上がりの照明は私が入ってからつけたものです。

店内は暗い感じ。

私は最初、店主に昼の営業は何時までか尋ね、「いちおう2時です」と回答を得、私からは「連れとか他に2人、あと15分くらいで来ますので待たせていただいてよろしいでしょうか」と確認し、了承を得ました。

私はお寿司やさんには少々詳しく、お寿司やさんには場合によってはお昼に夜の仕込みをすることがあるのをわかっておりましたので、じゃましたらわるいな、という考えもあり、念のため少々待って握ってもらえるか確認したのです。


で、待っていたら、10分くらい経ってから店主が「お連れさんがいらしてから握った方がいいでしょうか、それとも今握っておきましょうか」と尋ねられたので、私は、連れとかはあと5分くらいしたら来るし、連れらは上か特上か、あるいはチラシなのか、体調によって何を頼むのかわからなかったし、いつも「お寿司は握りたてがいちばんだ」と言っていたので、あと少しだと思って店主に「すみませんが来てから握っていただけませんか」と頼んだのです。

店主は、「はい、わかりました」とカウンターの向かって左側の台所、仕込みの流しに引っ込みました。


私が今回書きたかったのはこの時の場面なのです。

一見温厚そうな店主、流しに引っ込んでどうしたと思いますか。


小上がりから、流しの中は、薄いカーテンで仕切られてはおりますが、私の位置からははっきり見えるのです。


一見温厚そうな店主、顔をしかめ、チッ、と高めに舌打ちして、何度も頭を傾げさも「考えられない」といった感じで憎々しげな顔をして、腹立たしげに玉子焼きの卵をかき混ぜたのです。


それが、薄いカーテンごしに丸見えだったのです。


私は動悸がし、その後どんどん冷めていく自分の気持ちを抑えるのがやっとでした。

私一人だったら「おっさん、カーテンの中、丸見えだよ。そんなにおもしろくないんならいらないよ。やめるやめる。帰る帰る。」と店から出ていたに違いないのですが、疲れておなかがすいているおばあさんと連れのことを考えると、ここで出るとがっかりさせるしかわいそうだと思ってなんとか気持ちを鎮めました。


おばあさんと連れの方が来てから、お寿司の上を頼みました。

いつもはお寿司は特上にするのですが、お店のレベルが疑われるし、味は極めてふつう、二流の下だとわかっているし、それ以前にこんな店主に儲けさせたくないという気持ちもあり、上にしたのです。

お寿司は案の定、二流の下、それ以下、下の中といったものでした。



私は連れの方に、「店主の人相をどう思う?」と尋ねました。

「なんとなく温厚そうだね」という返事でした。

そうでしょう。

なんとなく温厚そうでしょう。
で、ちょっと気弱そうな雰囲気も漂わせている。

でも。


心に憎悪がある。

気持ちを顔に出しやすい。

それは相手には見せないようにして、裏では憎悪を持って顔に出している。


鍛えられた人は、他人から無理・困難で、かつ、でもやらなければならない依頼等を受けた場面、あきらめて「やるしかないな」と、「どうやろうか」という方向になるけど、力量がない人の場面、「何なんだよ、腹立つなあ」と、依頼者への憎しみの気持ちをまず持つのです。


六十近くになって、また、若い頃にはおそらく親方に付いて修業したはずの、いっぱしの器があってしかるべきの職人が、あんなことでいいのかと私はほんと腹立たしかった。
二度と行くことはないと思いました。


今回のことは、車の中でお連れさんとかの感触を確認しながら少しずつ明かしてしまいました。

ふたりとも、あとは行くことはないよという話となりました。

お寿司やさんにとってはお寿司を握る時が晴れ舞台です。
そのために仕込みがあり、裏の仕事がある。

いいお寿司を、お客さんに気持ちよく味わってもらうのがお寿司やさんの仕事の目的、醍醐味。

決して仕込みが一番の仕事になることはない。

それをあの店主は勘違いしていたということだ。




※画像はくれぐれも「記事とは関係ない、私の気に入っているお寿司やさんのお寿司」です。ここのお寿司は大好きです。