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2024/3/28|カテゴリー:呪術|comment:



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クラス替えアンケート

2012/6/6|カテゴリー:呪術|comment:6件

3791[sage]:2012/02/02(木) 18:49:00.78 ID:Dnz/1ww30
子供の頃の奇妙な体験ってけっこうあるよな。皆の話を聞いてて、ずっと気になってた
ことを書いてみる。
毎年3月が近くなると「クラス替えアンケート」のことを思い出すんだけど、
俺以外にこんな体験した人っているかな?
俺が小学校4年生のときの話で、俺が当時かよう小学校はけっこうな大規模校で
毎年クラス替えがあった。春休み中、3月の終わりに先生方の離任式があって、
そのときに体育館に新しいクラスの名簿を張り出すんだけど、親友や好きな女の子と
一緒になりたいとか、毎年すごくドキドキしたことを覚えている。
その年、3学期の2月に入ってすぐ俺に一通の封書が来た。「クラス替えアンケート」
という文字が表に大きく印刷され、教材会社の主催になってたけど、これまで調べた
限りではその名前の教材会社は存在しないんだ。中身はどんな内容かというと、
俺の小学校の4年生の中で、絶対に同じクラスになりたくない人の名前を一名書いてくださいというもので、
それを出した人には文房具のセットが当たるかもしれないということだった。
当時俺は雑誌の懸賞に応募するのが趣味だったし、返信用のはがきが入っていたので、
特に変だとも思わず、同学年で一番嫌ないじめっ子の名前を書いて出してやった。
実は俺はその名前を書いたやつと家が近所で、登下校でよく嫌がらせをされていた。別のクラスだから
まだよかったものの、同じクラスになれば本格的なイジメを受ける可能性があって、
絶対に同じクラスにはなりたくないと思っていた。5年生は6クラスあるから可能性は低いんだけど。
その後、すっかりそのアンケートのことは忘れていたんだけど、3月に入ってすぐに同じ名前の
教材会社から大きな封筒が届いた。それで前のアンケートのことを思い出したんだけど、内容は、
俺に文房具セットが当選したというもので、そこまでは不思議はないんだけど、その文房具セットが
送られてくるには条件があって、一つやってほしいことがあると書いてあった。それから、
俺が名前を書いてやったいじめっ子とは同じクラスにはならないだろう、ということも書かれていて
まだクラス替えの先生方の会議も行われていない時期のはずだったので、それはちょっと不思議だった。
その封書の中には一つ、厳重に和紙でくるまれたお守りのようなものが入っていて、その表には
俺の住んでいる地域から遠く離れた県名と、知らない小学校名、それから5年生という文字と
やはり知らない男の子らしい名前が気味の悪い赤い字で大きく書かれていた。
それを俺の住んでいる地域にある神社、これは古くて由緒があるけれど大きなところではなくて
ほとんど普段は参拝する人もいない忘れ去られたようなところなんだけど、そこの境内にある松の木に
3月8日の午後9時以降に釘で打ち付けてほしいという内容だった。それをやったら懸賞のセットを
送ってくれるということみたいだった。それからその封書は、前に来たものとともに一切が済んだら
近くの川に流してほしいとも書かれていた。
これはすごく不思議で、最初は仲のよかった中学生の兄に相談しようと思ったけど、封書にはこのことは
誰にも話してはいけないと書いてあったのでやめにした。神社は自転車で5分程度のところにあり、
そのお守りのようなのを釘で木に打ち付けるのは難しいことではない。雪の降る地域でもないし、寒いけど
9時過ぎに15分ほど家を空けるのは何でもなかった。その封書とお守りは自分の勉強机に入れておいた。
3月8日になった。おれは手紙の依頼通りにやることに決めていて、夕食後9時を過ぎてから、
そのお守りとどこにでもあるような釘とカナヅチを持って、グランドコートを着て自転車で神社に出かけた。
その神社は住宅街のやや小高い岡の上にあって、俺は下で自転車を降りて幅の狭い石段を登っていった。
石段にも神社の境内にも一つずつ街灯があったので、暗いけど足元は見えた。もちろんまったく人影はなく、
さすがに気味が悪くて早く終わらせようと、コートのポケットからお守りと釘とカナヅチを取り出し、
走って何本か鳥居をくぐり神社までの参道からわきに入って、おみくじが結びつけられたりしている松の木を一本選んで、
自分の頭の上くらいの高さに名前が書かれているほうを表にして、真ん中に強く二・三度釘を打ち付けた。
すると手の中でそのお守りが微妙に動いた感覚があって、俺は思わず手を離したけど、お守りは木に固定されて落ちなかった。

そのとき、10mほど離れた神社の脇から急に人が出てきて、こっちに向かって大きな声で「見届けた」と言った。
その人の姿は暗くて、あとで思い出してみてもどんな服装だったかもわからなかった。声は男のものだった。
俺はもう完全に怖じ気づいていたので、そのまま後ろも見ないでカナヅチを放り出して走って石段を下まで降り、
自転車に飛び乗って家に帰った。

388 :9[sage]:2012/02/02(木) 19:00:35.63 ID:Dnz/1ww30
ここから書くことはあまりない。俺がアンケートに名前を書いたいじめっ子は、その1週間後に自転車に乗っているときに
トラックにひかれて死んだ。封書などは指示どおり近くの川に流した。4月に入って有名なデパートから立派な文房具セットが
送られて来たが、封書にあった教材会社名はどこにもなかった。その後一回も連絡はない。神社には何年も立ち寄らなかったので
木に打ち付けたものがどうなったかわからない。カナヅチをなくしたので親父に後でしかられた。
一番気になるのは、そのお守りに名前があった知らないやつだが、どうなったかはもちろんわからないし調べてもいない。
改めて書いてみるとやっぱり奇妙な体験で、すべて自分が想像で作り出したことのような気もする。文房具セットは兄にずいぶん
うらやましがられたけど、たんに懸賞に当たっただけなのかもしれない。こんな経験をした人って他にいるんだろうか? 

魔樹

2012/5/11|カテゴリー:呪術|comment:5件

131 : 【魔樹】全10レス[sage]:2011/12/04(日) 18:40:08.16 ID:bPIL5hLh0
Bとは今勤めている会社で知り合った。俺が入社した時、いろいろ面倒を見てくれたのがBだ。
Bの指導は大雑把なもので、几帳面な俺はかなり戸惑ってしまった。
だが同い年であったことと出身地が同じであったことで、一気に親しくなっていった。
俺とBは毎日ように飲みに行った。2人とも車が好きで、話題には事欠かなかった。
だが、入社して半年ほど経ったころからBの付き合いが悪くなった。
俺たちの関係はいたって良好だが、飲みに行く回数は明らかに減っていた。
慣れない環境に居る俺に、気を使っていてくれたのだろうか?
そういえばBは意外と酒の量は少ない。元々そんなに飲むタイプでは無いのかもしれない。
それから3ヶ月程経つと、次第に俺たちの会話は少なくなっていた。
俺からは話しかけるのだが、Bから話しかけてくることが少ない。
あったとしても仕事の内容がほとんどだ。

132 : 【魔樹】全10レス[sage]:2011/12/04(日) 18:41:00.86 ID:bPIL5hLh0
何か悪いことでもしてしまったのだろうか?
俺は他の同僚に相談したが、皆一様にBに変わった様子は無いという。
以前は明るくて、毎晩のように飲みに行っていた…と説明しても、何故か皆そろって釈然としない表情だ。
俺は理解に苦しんだが、考える時間は与えられなかった。
というのもBが突然無断欠勤し、それから一週間もの間出勤することがなかったのだ。
俺や上司は何度も連絡したが、その都度徒労に終わっってしまった。緊急連絡先となっていたBの実家の電話番号は使用されていなかった。
心配になった俺は上司にBの住所を聞き、様子を伺いに行くことにした。
昭和を思わせる古い木造アパート。敷地は荒れ果て、雑草が生い茂っている。
Bの部屋は2階の一番奥だろう。錆びだらけの階段を上り通路を進むと、確かにBの名が記された表札があった。
ドアの新聞受けは溢れかえっている。

133 : 【魔樹】全10レス[sage]:2011/12/04(日) 18:41:54.74 ID:bPIL5hLh0
親しい仲であったものの、こうしてBの部屋を訪れるのは初めてだ。
俺は呼び鈴を押した。
………
反応が無い。居ないのか?今度はドアをノックし、自分の声で呼びかけた。
「B!居るか!○○(俺)だけど!」
………
やはり返事は返って来ない。
寝ているか、外出しているのだろう。
「だが待てよ、何か重い病気で動けないのかも知れない」
そう思い、俺はそっとドアノブを廻した。
鍵は掛かっておらず、ドアは開いた。「ギギギギギ」と不必要なほど大きな音を上げながら。
いきなり面食らってしまった。
玄関は何故か泥まみれだ。奥のドアまでその泥は続いている。とても靴無しでは上がることは出来ない。
暫く思案したが、悪いと思いながらも土足のまま中へ入ることにした。
玄関を入ってすぐの所にキッチンがあり、シンクには並々と水が張られている。そこには小さな虫の死骸が幾つも浮かんでいた。
何故か食器類は見当たらない。何だかよく分からないが、キッチンを見ていても仕方が無い。

134 : 【魔樹】全10レス[sage]:2011/12/04(日) 18:42:40.71 ID:bPIL5hLh0
恐らく1Kであるから、Bが居るとすればこの先の部屋か、トイレ、風呂のどれかだろう。
そう思いシンクから目を離すと、部屋へ続くドアが少し開いていることに気が付いた。
隙間からは何も見えない。不気味な雰囲気が漂ってくるのは気のせいだろうか?
「………」
俺は意を決してドアを開いた。
部屋の明かりは消えている。6畳ほどの広さ。カーテンから僅かに光が漏れている。
何も無い部屋だ…テレビも、テーブルも、家具や家電は何も無い。
だが…部屋の一角…ひときわ大きな、そしてドス黒い大きな影を見つけた。
その影の主は、なんと2メートル以上はある巨大な朽木だった。
それは小さな部屋には収まりきらず、天上を少し突き破っている。全体が黒く変色していて、ぐっしょりと湿っているようだ。
下の方に生えたカビともコケとも判らぬ奇妙な植物が畳に広がっていた。
所々に赤黒い布のような物が無造作に巻きつけられ、その上に見たことも無い字で何か書かれている。
136 : 【魔樹】全10レス[sage]:2011/12/04(日) 18:43:45.44 ID:bPIL5hLh0
「な…なんだ、これ?」
この朽木の異様さも勿論だが、なぜこんな物がBの部屋にあるのか?
よく見ると、木の左右には自然石だろうか…サッカーボール程の石が階段状に器用に積まれている。
それは腰の高さほどで、一番上には蝋燭が無造作に散らばっている。
他にも様々な仏具のような物が散らばっているが、その用途や名称は分からない。
俺は部屋の明かりをつけようと、スイッチの紐を引っ張った。
だが何度引っ張っても、蛍光灯は光を灯さない。
突然、顔に何かが触れた。
「うわっ!」
咄嗟に手で払って気が付いた。薄暗いため見えなかったが、所々に小バエが居るようだ。
不気味で巨大な朽木と儀式の様な形跡、不衛生極まりない部屋。
一体Bの身に何が起きたのだろうか?

137 : 【魔樹】全10レス[sage]:2011/12/04(日) 18:44:46.77 ID:bPIL5hLh0
Bのことは心配だが、正直なところ俺はさっさと退散してしまいたいたかった。恐らくBは居ないだろう。
帰りに風呂とトイレを覗いて、それでアパートを出よう。あとは警察に連絡すればいい。
そう思い部屋を出ようとした時。
「パリ」
「!?」
何かが聞こえた。
「ペリ」
「!!」
まただ。木だ。朽木から音が聞こえる。
もう嫌だ。こんなところからは逃げ出したい。
しかし本心とは裏腹に、確認せずには要られない。きっと虫がいるのだ。そうであって欲しい。
俺は朽木に近づき、目を凝らした。
よく見ると、所々に大きな釘が深々と打ち付けられている。また気味の悪い物を見つけてしまった。
そう思いながら朽木の表面を舐めるように見回していたその時。

138 : 【魔樹】全10レス[sage]:2011/12/04(日) 18:45:50.22 ID:bPIL5hLh0
「ヒィィィィ!!」
俺は思わず声を上げた。
目だ!
木の皮の隙間から何かがこちらを見ている!目をカッと見開き、俺をじっと見据えている!
俺は反射的に後ずさった瞬間、足がもつれて転んでしまった。尻餅をついた格好だ。
「バキッ!ベキッ!メリメリ!」
朽木の内側から不気味な手が這い出てくる。明らかに人間だ。
この朽木の中に人間が入っていた。内部は空洞で、そこに人間が入っていたのだ。
そして…見ていたのだ。ずっと…俺がこの部屋に来てからずっと。
朽木の皮が次々と剥がされていき、薄暗い部屋の中でもその姿がはっきりとしてくる。
そこに居たのは…なんとBだった。
髪がほとんど抜け落ち、肌は紫色に変色している。顎がだらりと下がり、唾液や泡を吹きこぼしている。
黒いムカデのような気味の悪い虫が、何も着ていないBの身体を這い回っていた。
おぞましい姿ではあるが、Bであるとすぐに分かった。

139 : 【魔樹】全10レス[sage]:2011/12/04(日) 18:46:42.75 ID:bPIL5hLh0
「あ…B?…ぁあ…」
恐怖で言葉にならない。
Bの身体は所々出血している。あの釘が刺さっていたのだろうか?
血走った眼球は、異様な速さで縦や横に動いていた。
「フシュ!フシュ!」
唾液を撒き散らしながらフラフラとこちらへ歩いてくる。
「く…来るな!」
全身がガタガタ震えて力が入らない。
俺は尻餅をついたままBを凝視することしか出来なかった。
もうBは目の前に居る。
「グゥエ!オェ!」
苦悶の表情の後、Bが唐突に嘔吐した。
緑色のネバネバした液体にまみれた奇妙な物体が、俺の足元に吐き出された。
今まで見たことも無い物体だ。知ってはいるが、知らないモノ。

140 : 【魔樹】全10レス[sage]:2011/12/04(日) 18:47:51.47 ID:bPIL5hLh0
それは…人間だった。小さな人間だった。いや、「人間の形をした何か」だった。
それは無表情でじっ…と俺を見つめている。
Bは自らが吐き出したその物体を暫く眺めていた。
そして、ゆっくりとこちらを向き、満足げな表情で「ニタァ」と笑った。
Bと目が合った瞬間、恐怖で気が狂うかと思った。
いや俺は狂っていたのかもしれない。
それはBのせいでは無い。無論Bも凄まじく恐ろしかった。
だが見たのだ、その時、もっと恐ろしいモノを。
Bの背後にある朽木の裂け目から「Bと同じ姿をしたモノ達」が這い出てくるのを。
生存本能だろうか?真っ白な頭の中でも、「逃げなければ」という強い衝動だけが俺を突き動かしていた。
俺は一気に部屋の外へ飛び出し、玄関へ駆け出した。

141 : 【魔樹】全10レス[sage]:2011/12/04(日) 18:49:06.97 ID:bPIL5hLh0
外へ出る瞬間、俺は無意識に振り返っていた。
その時見た光景は…Bが…「Bと同じ姿をしたモノ達」にムシャムシャと食われている光景だった。
Bはあの時見せた「満足げな表情」のままだった。
俺は気が付くと病院のベッドに居た。道端で気絶しているところを運ばれたらしい。
あの日から2日が経過していた。
俺は入院の為会社を辞めた。全てを忘れたかった。全てが夢だったと思いたかった。
上司や同僚には何も話せなかった。ただ、Bは居なかった…とだけ伝えた。
Bの捜索願が出されたが、行方不明のままらしい。あれはBでは無いのか?警察はBの部屋を調べたはずだ。
指紋のせいだろうか?俺も疑われたが、容疑は掛からなかった。
退院し数年間はカウンセリングに通った。
あの日の出来事は何だったのか?と落ち着いて考えられるようになっていた。
何か知っていたら教えて欲しい。
あの不気味な朽木と儀式?の様な痕跡、Bの変わり果てた姿。
そして、あの「人間の形をした何か」と「Bと同じ姿をしたモノ達」は何だったのか?
あれから5年も経つが、Bは未だに行方不明だ。

師事 5

2012/4/30|カテゴリー:呪術|comment:4件

826 :1/3[sage]:2011/05/24(火) 21:28:51.79 ID:hmhcUm6a0
55だけど長文なのに読んでくれてありがとう。
今日は武器の話を一つ。

中3の途中から今までは受験勉強が忙しくて中断したが、
俺は小学生からその中3の間まで、先生から多くのことを学んだ。
オカルトに興味が無かった俺も、その間に先生が凄い量の知識を持っているのは分かってきた。
そして、多くの術的な道具も所持してるんじゃないか、と気になってきた。
陰陽師の話なんかではさ、悪い霊と戦う為の武器とか定番だよね。
あれだけ多くの知識量を蓄えているなら、武器の一つや二つも持っていて不思議じゃないよね。

それで俺は勉強の合間に、先生は何か凄い武器を持って無いの?と聞いてみた。
今思えば、子供にしても俺は、馬鹿な事を聞いたものだ。
先生は笑い、武器というと、どんな武器のことかな、と聞き返してきた。
悪い術者や霊と戦う為の武器、と俺は答えたと思う。
その時の先生は、何とも言えない表情をしてた。
そして暫らく考え込んだ後、有ることは有るよ、と教えてくれた。
けれども、それは絶対に見せられないし、どんな物かは教えられない、と。

そもそも呪術的な武器とは何かと聞かれた場合、普通の日本人はなんて答えるかな?
陰陽師の話を読んでいるならば、符なんて連想するんじゃないかな。
他には清めた水だったり、塩だったり。
しかし実際の武器は、そんな生易しいものじゃないよ、と言っていた。

以前、先生が台湾に行った時、道士が祭壇にある物を飾っていたのを見た。
それは何ですか、と先生が聞くと、これは我々道士の武器だと説明してくれた。
どのような形状かは、ここで書けない。
ただ、それは非常に強力で、使うと付近の霊を全て粉々にしてしまう、と。
だから使用する時、もし近くに式神を使役しているならば注意しなくてはならない。
敵味方など関係無く、辺りの霊を全て蹴散らしてしまうから。

827 :2/3[sage]:2011/05/24(火) 21:29:20.35 ID:hmhcUm6a0
また、とある国で造られている呪術の剣も非常に力が強い、と教えてくれた。
製法からして、非常に怖い。
最初に、その刃を造るための鉄を、墓場へ長い間、埋めておく段階から始まる。
墓場というのは陰の気が非常に強いからね。
原材料となる鉄に、その陰の気を長い間かけて染み込ませておくんだ。
しかも、その製作中に、その刀身に特殊な呪術を施して行く。
その国では、このような道具を作る術者が数多い。
そして、この剣は製作者の術者の力量が並でも強力になってしまう。
ましては高度な術者ならば、非常に強力な剣になるんだ、と。
神であっても低位ならば、恐れさせることも可能だ、とね。
更に、もし式神を使役している術者が所持する場合になると、
その式神をも恐れさせるため、お前達に剣を向けない、と最初に安心させる必要がある、と。

だから先生は言ったんだ。
術者はいざという時のために、強力な武器を持つ必要がある。
けれども同時に、武器を持つ行為自体が非常に危険であるのを自覚せねばならない、と。
例えば、そんな武器を所持して外出する場合、行き先に注意する必要がある。
特に心霊スポットなんかは行かない方が良いね、と。
そんな強力な武器を見せびらかして歩いたら、霊に喧嘩を売るような物だから。
その地に棲む霊達に対する挑発に他ならないんだと、先生は言っていた。
所持者本人にその気は無くても、と。
霊が霊を呼び、強大な力になって、自分に向かってくる場合だって有りうるから。

そして、絶対にしてはいけないのが、荒神を祭る場所への所持。
例を挙げると、日本なら平将門公を祭る場所へ持ち込んだら、大変な目に遭う、と。
その所持行為は、宣戦布告とみなされてもおかしくない。
しかも神様というのは、傍に多くの者達が控えているからね。
平将門公ならば、多くの兵の霊を引き従えているだろう。
しかも一人一人が、長い間に力を蓄えた一騎当千の強者だと。
術者が個人で使役する式神とは、比べ物にならない程の力を蓄えている、と。
そんな荒神に仕える多くの霊達が、無礼者に対して一斉に攻撃を仕掛けてくる。
そうなったら、どうにもならないね、と。

828 :3/3[sage]:2011/05/24(火) 21:29:51.83 ID:hmhcUm6a0
だから強力な武器というのは、同時に非常に危険なんだよ、と先生は教えてくれた。
時には所持しているだけが、とても怖いくらいにね、と。

しかし面白いのが、強い武器であれば強い武器であるほど、使う頻度は下がるという事実。
道士の方々も、前述した以上に強力な武器を、数多く所持している。
けれども、そんな武器を本気で使用する機会など、滅多に無いね。
一生使うことも無いまま、終わってしまうのが殆どじゃないだろうか。
日本の警察官と一緒だよ、と先生は説明した。
勤務中に備品の拳銃を発砲せず、定年退職する人達が殆どじゃないかな。
酔っ払いや喧嘩を止める場合に、警棒を使う程度じゃないかな、と。

そして先生は、もしかして何か呪術的な武器が欲しいの?と聞いてきた。
俺が、うん、欲しいと素直に答えると、先生は男の子らしいね、と笑った。
じゃあ、だからこそしっかり勉強しなくてはいけないよ、と。
武器を使うには、冥律という基礎をしっかり身に着けねばならない。
これは様々な術式と同じなんだ。
人間社会だって武器の扱いを取り締まる、銃刀法があるよね。
同じように、冥律を犯さないよう、武器の携帯に注意せねばならない、と。

しかしね、仮にそんなものを持ったとしても、あまり変わらないよ、と言った。
先生自身が若い頃、強い武器を初めて手に入れた時は、とても心躍ったそうだ。
これで自分も術者の仲間入りだ、とね。
たとえどんな敵が現れても、今の自分なら負けることは無い、とか。
しかし、しばらく所持して分かったんだが、使う機会なんて無いんだね。
先生自身、別に敵対する術者がいるわけでも無いし。
強力な敵に出会う機会があるわけでも無いし。
現に入手してから、今まで殆ど使ったこと無いんだよね、と。

だから強力な呪術武器になるほど、埃が溜まりやすくて掃除が面倒なんだ、と先生は笑っていた。

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