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唐突ではあるけれど、俺はテレビを殆ど見ない
見るとしたら週末に少しだ。
ドラマやアニメは本当に好きなものだけDVDやネットで観るし、
ニュースや最新情報ももっぱらネットだ。
そんな俺が最近秘かな楽しみにしている番組がある。
九州朝日放送(福岡)製作のローカル番組で日曜の昼に佐賀・宮崎を除く九州5県でOAされている
『未来への羅針盤』
だ。
15分と短い番組だが
ナビゲーターは女優の壇ふみさんで九州に関わりのある著名人の心温まる感動秘話を紹介する内容で、この3月いっぱいで残念ながら終了するようだ。
終了までのラスト3回は壇ふみさんのお父上で作家の壇一雄さんも福岡にゆかりのある方だそうで特集になっている。
この前の日曜はその2回目で
壇一雄さんは九州にゆかりの万葉歌人を調べていたそうで、
特に大宰府赴任直後に妻を亡くし、また酒と花をこよなく愛した『大伴旅人』に先妻を亡くした自分を重ね合わせたいたようだという内容で大伴旅人と山上憶良の友情と歌が紹介されていた。
大伴旅人は妻を亡くした悲しみを
愛(うつく)しき
人の纏(ま)きてし
敷布(しきたへ)の
我が手枕(たまくら)を
纏く人あらめや
訳
「愛しい人が枕にした私の腕(かいな)―
―この手枕を、亡き妻以外に枕にする人がいるだろうか、
いるわけがないのだ。」
や
世の中は
空(むな)しきものと
知る時し
いよよますます
悲しかりけり
訳
「世の中は虚しいものだと言いますが、
こうしてそのことを思い知る時、諦めの境地になるどころかさらにいっそう深い悲しみに襲われるのです。」
と詠み
それに対して山上憶良は
大野山
霧立ち渡る
わが嘆く
息嘯(おきそ)の風に
霧立ちわたる
訳
「大野山に霧が一面に立ち渡っています。
私の嘆く、嘆きの息によって一面に霧が立ち渡っているようです。」
と詠み、旅人の妻の死を悼んだ間柄は有名だが
旅人が開いた『梅花の宴』にて
開催者である旅人が詠んだ
我が園に
梅の花散る
久かたの
天より雪の
流れ来るかも
と
憶良が詠んだ
春されば
まづ咲く屋戸(やと)の
梅の花
独り見つつや
春日(はるひ)暮らさむ
は通常
「この我らの集う園に梅の花が舞い散る―
―天から雪が流れ落ちてくるのだろうか。」
「春になると最初に咲く屋敷の梅の花よ、
私独りで眺めながら、ただ、春の一日を暮らしましょう。」
と解釈されるところを二人の間柄から
「我が家の庭に散る梅の花の様子は
亡き妻が居る天からの雪のように見える。」
「春になってお屋敷に咲いた梅の花は、
(旅人)お独りで眺めるより、皆で眺め愛でましょう。」
と応えた友情の歌と解釈し紹介されていた。
改めて妻を愛して酒と花も愛した魅力的な人物の旅人と
憶良の男の友情に心がほんのり温まった。
話題:万葉集