「森の中に、遺跡?」

ケトルは眼下を見下ろし呟いた。
針葉樹の森の中、すり鉢状に凹んだ底にこんもりとしたドームがある。あちこち苔や枝葉に覆われているが、そこから覗くのは鈍い石の質感だった。

「こんなに木があるのに、なんでわざわざ石で建物を造ったんだろう?」

ケトルの村は木造建築ばかりなので珍しくて仕方がない。
茂みに隠れて周辺を探索すると、どうやらケトルの現在位置から逆の方向に出入口があるらしかった。まだ新しい轍が続いているのは荷馬車の跡だろうか。
あの声の主がいるのはここに違いない。だが武装した見張りが出入口の左右に二人。内部を見学したいと言っても追い払われそうな気がした。
以前村に来た吟遊詩人から聞いた冒険譚が頭をよぎる。

「アレイ王子の冒険だと、確か通気孔から入ったんだよな」

きょろきょろ辺りを見回すと、それらしき穴が開いていた。