荷物から取り出したロープを使い、通気孔に侵入する。暗く埃っぽいが、意外なことに、荷物を背負ったままのケトルでもなんとか腹這いになって通れるくらいの広さがあった。もしかしたら設備点検のために大人が通ることを想定しているのかもしれない。
ここでようやくケトルは気付く。己がただ闇雲に通気孔を這い回ろうとしていることに。

「おーいおーい、助けに来たよー……」

試しに呟いてみるが、当然のように返事はない。
ケトルは遺跡の外観を思い出す。窓のない円型のドーム。入口は見たところ一箇所。

「あの子がここにいるなら、どうやって声を飛ばしたんだろう? 自分じゃ動けなかったりするのかな? だ、だめだおれ馬鹿だからわかんねーや」

ケトルは頭を掻くと、通気孔から漏れる灯りを頼りに進み始める。

「とりあえず中心部から探してみようかなっと。勇者カロリングもそんなことしてた気がするし。確か」

不安を誤魔化すためにあえて気楽に笑った。