タイトルなし

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逢魔時奇譚【33話(33)】
「あ!聖愛ちゃ、」
「帰る」
「聖愛ちゃん待って!夜分遅くに女の子1人は危ないよ!俺が支払いを済ませるまで待って!」
わざと大きな音をたてて席を立った聖愛は天樹の言う事など聞かず、スタスタと去って行く。
「それで先日祓本部へ取材に行ったのですけれど」
「佑さんはエクソシストさんの取材を担当なさっておられるのでしたよね」
「はい!悪魔祓いをする人達ですからどれだけ怖い人達かと思って内心ビクビクしていたのですけれど、皆さん気作で優しい人達ばかりでしたよ」
「それは良かったですね」
「中でも驚いたのが、僕よりも若いまだ10代後半の女の子のエクソシストもいらした事ですね」
「かっこいいですね」
「はい!とてもかっこいい女の子でした!」
楽しげに話す佑と女性。聖愛に呼ばれた事も彼女が居る事も全く気付かない程、女性に夢中な佑を去り際に涙目で睨み付ける聖愛。
ーーかっこいい女の子って何だよ!それあたしの事だろ?!…けんな。ふざけんな!!あたしは…あたしは!!椎名さんに可愛いって思ってもらいたかったのに!!どうせ椎名さんが可愛いって思っているのはその女なんだろ?!ふざけんな!!お前の取材なんてもう一生受けてやらねぇ!!ふざけんなふざけんな!椎名さんなんて大嫌いだ!!ーー

21:46、路地裏ーーー
「聖愛ちゃん」
しかし聖愛は無視。
「お互い好きな人が居る俺達が未来で夫婦になっているのは…こういう意味だったんだね」
「…!」
天樹本人からしたら悪気の無い一言も、今の聖愛には残酷な一言。

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逢魔時奇譚【33話(32)】
「まああたしがそんじょそこらの女優より超絶美人ちゃんだから口説きたくなる気持ちも分かるけどな!けど!あたしには好きな人がいるから今後あたしを口説くのはやめとけよ!あたしの心はその人のモンなんだからな!だからあたしに告ったっててめぇがハートブレイクするだけだぜデコ助!」
「ははは…。大丈夫大丈夫。俺もそうだから」
「マジか?!誰だよ!?教えろ!」
「内緒〜。…ってアレ?俺達お互い好きな人がいるのにどうして未来で夫婦になっているんだろうね?不思議だなぁ」
ガタン、
「!」
天樹の話など聞こえていない聖愛。何故なら、天樹の座るソファーの後ろのソファー席にたった今腰掛けた男性が目に入ったから。その男性は昼間、聖愛に取材をしにやって来た…

ガタン!!
「椎名さんっ!!」
「え?」
思わず立ち上がった聖愛。だから天樹もつられて振り向く。後ろのソファー席へ座ったのは佑だった。聖愛の頬は赤いし、今迄天樹と話していた時とは別人なまでに声が高くて恋する乙女な顔付きへ早変わり。
ーー椎名さん聞こえなかったのかな?ーー
「あのっ!椎名さ、」
「遅くなってすみません。撮影が押してしまって」
「…!」
佑の向かい席へやって来たのは女優帽をかぶりサングラスをかけた女性。サングラス越しでも分かるふわふわした可愛くておっとりしていて…聖愛とは明らかに正反対なタイプの女性だ。
「いえいえ!大丈夫ですよ!僕も今来たところですから!」
「ふふっ。本当ですか?佑さんは優しいから私に気を遣っていつもそう言ってくれますよね」
「そ、そんな事ありませんよ!本当の事を言ったまでです!」
「ありがとうございますっ」
見るからに親しげな佑と女性。誰がどう見ても2人は恋人。だから聖愛は呆然としてしまうし、そんな聖愛の様子で彼女が佑をどう思っていたかすぐに察した天樹は口を噤む。

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逢魔時奇譚【33話(31)】
「あの子達。未来からやって来たってだけでSFの話みたいなのに。その上、俺と聖愛ちゃんの子供だなんて言うから本当びっくりしちゃったよ。そんな不思議な事もあるもんだね」
「ンなのガキ共の嘘っぱちに決まってンだろ…?!まんまと騙されていやがるんじゃねぇよ…!それに誰がてめぇみたいなヒョロっちい軟弱野郎とぉお…!!」
「分かった分かった。ごめんごめん。俺が悪かったから、座って座って」
「ったく!どいつもこいつもガキ共の策略にまんまと嵌っているんじゃねぇよ。大体あんなの、家出したガキ共が衣食住にありつきたいが為の嘘っぱちに決まってンじゃねーか!」
「聖愛ちゃんはあの子達が嘘を吐いていると思う?」
「はぁ?当ッッ然だろ!」
「俺は本当だと思うな」
「ふっざけんな!根拠は?!」
「根拠?そうだなぁ…聖弥も天音も美人さんなところが聖愛ちゃんにそっくりでしょ。瞳の色は聖愛ちゃんと同じだし。髪色は俺かなぁ?聖弥の身長が高いところは俺似で、天音の身長が低いところは聖愛ちゃん似だと思うな。それにね、さっき確信したんだ。聖愛ちゃんが"フレンチトーストが好物"って話してくれた時の笑顔が天音と瓜二つだった事。天音もフレンチトーストが好物って言ってた事。聖愛ちゃんは2人の事を良く思っていないみたいだけど。未来から来た自分の子供だって思ったら、どうしようもないくらい可愛く見えて、何が何でも守ってあげなくちゃっていう幸せな気持ちになるよ。聖弥と天音が産まれる未来が早くやって来ないかなぁ」
「……」
シュバッ!!ドン引きした聖愛は自分の顔の前を両腕でガード。
「デ…デコ助てめぇ…!早くガキが欲しいからっつってあたしを襲う発言を堂々とするなんざ、デコ助のクセに大した度胸じゃねぇか…!あたしに指一本でも触れてみろ…!ぶっ殺してやるからな…!?」
「違うから!!そういう意味で言ってないから!!聖愛ちゃん声が大きいよ!?周りの人が引いちゃっているから!!」

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逢魔時奇譚【33話(30)】
「あのな!あたしフレンチトーストが大好物なんだ!元ヤンの柄じゃねぇから本部では我慢して食わなかったんだけどよ。コレ、秘密な!」
「…!」
照れくさそうに頬を赤らめながらピースをして微笑んだ聖愛の笑顔が、昼間見た天音の笑顔と重なった。よく似ていた。瓜二つだった。だから、天樹は思わず聖愛を見つめてしまう。
「あァ?!ジロジロ見てンじゃねぇよ!気持ち悪りぃな!」
「ごめんごめん…」
ガンを飛ばして睨み付けてすぐいつもの元ヤン聖愛の表情に戻ったから、天樹は苦笑いを浮かべて目を反らし、メニューを見るのだった。
2個目のフレンチトーストを幸せそうに頬張る聖愛。
「はむっ!はむっ!」
「美味しい?」
「超美味めー!!」
「はは。それは良かった」
「あ?」
「ん?」
「デコ助お前それしか食わねぇのかよ」
ふと、気付けば天樹はサラダしか食べていない。
「少食なんだ」
「それだけじゃあ悪魔にぶっ倒されるぞ!男ならもっと食え!」
「無理無理。もうお腹いっぱいだよ」
「ダッセェなぁ!」
聖愛は知らない。いや、祓の人間全員が知らない。天樹は大天使だという事を。故に人間の食べ物は溝の味しかしないから、どうしても人前で食事を摂らなければいけない時に少食を装う。
「今日はびっくりしたね」
「ん?もぐもぐ」
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