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隣の女神 6



ーーこの落ち着かない気持ち、久しぶり



優子side




ぱっと目が覚める
時計はまだ5時を少しすぎた頃だった




『トイレ...』



昼間の蒸し暑さは流石に無いけれど、やっぱり真夏
5時と言っても暑いは、暑いな。
トイレの便座に座りながら、携帯を開いた





(優ちゃん!久しぶり。陽菜お姉ちゃんだよー(бвб)今年、帰るんだけど優子に会えるかな?)




『変な絵文字ー』



昔からあの人が好きだったこの絵文字
唇がBの所なんて、自分をすごくわかっていると思う
まあ、何をやらせても可愛い人だ
こんな絵文字、よくも思いつく





トイレから出た私は、冷蔵庫を開ける
冷えたお茶を喉に流し込むと、暑い体をその一瞬だけ冷やしてくれた




(結局、返信してないや)




既読無視ってやつ
私はそんな事基本的にしない
いや、そんなこともないか
興味のない人や、めんどくさい事はやっぱりやるかもしれない
でも、あの人からのラインなんていつもすぐに返していた




『んーーー』




はあ。
ため息を一つ
あと4時間もしたらこっちに着くのを知っていた
あっちゃんが朝一の飛行機でくるって、と教えてくれたからだ
空港から実家に着くのはまあ、1時間以内だろう
そう考えると、心がざわざわしてきて落ち着かない気持ちになる
なんせ返信もしていないし





『やめた。寝よ』




考えたって、あの人が帰ってくる事実変わらないし、私が返信をしていない事実も変わらなかった
とりあえず、頭を休めて再びベットに戻る事にしよう





*******





そう、これが早朝の話
わかって欲しいのは私は酷く緊張していたって事なんだけど




(ピンポーン、ピンポーン)




『ゆーこ、出てー』
『...ああ、うん』




母に頼まれて、ソファに座っていた私は重い腰を上げる
時刻は13時。




『...はい』
『あ、陽菜です。...優子かな?』
『.....開けるね』





久しぶりに彼女を見るのはカメラモニター越しだった
心臓がどきどきしている
この扉を開けたら、





(ガチャ)




ばっちりと目が合う





『優子。久しぶりだね』





久しぶりに聞いたこの声
ああ、本当に目の前に彼女がいる

とても柔らかく優しいその笑顔は昔と変わっていなかった
むしろ、もっともっと大人びていて、一瞬で心を奪われていく自分に気づいてしまった





『....』
『おーい、優子?』
『あ、うん。久しぶり。え、っと、はい。入って?どうぞ』
『うん。お邪魔します。わー、久しぶりだ。大島家ー』




間延びした話し方もやっぱり変わっていなかった




青い春 16


可愛くて、やばいかも




ーー陽菜side



(かわいい、、やばい)




優子の舌と陽菜の舌が絡み合うこの感じ
陽菜は堪らなく気持ちよかった
でも優子は、こうゆう事が初めてだから、何が何だかわかっていない感じがする
ぎゅーーって目を閉じて、一生懸命さが伝わってきて、ぶっちゃけ、
めっちゃ可愛い。めっちゃやばい。




『んっ、はあっはっ...』
『ゆーこ、大丈夫?』
『うん、うん、なんか、うん。』
『ふふっかわいー』
『うーー、こじぱは余裕だね、、あたし、全然余裕なくて、うーー』
『....余裕ではないかな』





本音だった。
心臓はばくばくだし、優子が可愛すぎるんだよ
しかも




『あたし、こうゆう事初めてで、うー』




恥ずかしさなのか、その潤んだ瞳もやばいの
それに、陽菜が上になってこうやって責める側なのは陽菜だって初めての事で、緊張だってしっかりしてる。
ほんとだよ?リードとかさ、した事ないし。




『気持ち、よかった?』
『えっ、う、うん。』
『陽菜も』
『ほんと?あたし、下手だよね』
『全然?てか上手くてもびっくりだよ?ゆーこ可愛い』
『...こじぱは、その、慣れてるんだね』
『えーやだー。その言い方。慣れてないよ』
『あたしよりは..』
『いーの。なにも考えないで?』




慣れてるって言葉やだなー
そりゃあ、こうゆう経験は確かにした事あるけど
別にめちゃくちゃ経験があるわけじゃない
ほんとにほんと。陽菜はチャラくないから
これ、ほんっとにほんと。




『ゆーこ、もっかい』
『う、え。もっかい?』
『...だめ?』
『だ、だめなわけないよ。うん。』




陽菜がもう一度顔を近づけると、真っ赤な顔した優子がまた目を瞑ってくれる





『んん..ふ、ん』




ああ、もー
そんな可愛い声出しちゃだめだよ
自分の体がだんだん熱くなってきているのがわかるの
陽菜のと、優子の大きな大きなお胸がくっ付いてるし





『んっ!..はる、な?』
『ん?』
『あ、ひゃっ!くすぐったいよお』
『ん、かわいー..』




堪らなくなってきた
陽菜の手は優子の服の中に手を入れて、脇から横腹、お腹辺りを摩っていた
凄く引き締まっていて細い。
そして、




『ゆーこ、体あついね..?』
『はあっ、』
『うん、かわい』




熱くなっている優子の体に物凄く興奮していた





『んっ、はあ..はるなあ』
『んー?』
『すきい』
『...陽菜も大好き』




これでもかってくらい気持ちいいキスをした
息を整えながら、トロンとした目で見つめられながら、言われる好きはやばいって、
もう、陽菜だって余裕無いし




『ゆーこ、もー』
『ん、へ?』
『はあ、かわいいよ』
『っ、あっ』
『....服、脱ぐ?』
『え、あ、と、待った待った』
『えー、まった?』
『はあ。あの、恥ずかしい、むり〜』
『むり〜?』




顔を真っ赤にして、頭をふるふるする優子
むり〜かちょっと、いや、すごく残念だけど仕方ないよね
もうほんと、限界ですって顔で陽菜を見てくる可愛い子




『あのね、陽菜?』
『んー?』
『あの、ごめんねあの』
『あー謝らない。悪い事してないよ?』
『うん。もうドキドキやばすぎて、これ以上は』
『ふふっわかってるよ』
『だから、あの、もっかいちゅー...したい』
『.....』





はい。反則。
うぶって、とんでもない




『いくらでもしてあげる』
『うん。へへ』
『ゆーこ、ブラぐらい取る?』
『!!!あっいや陽菜〜』
『ふふっうーそ』




優子ありがとう
少しだけ、先に進めた記念日だね?


隣の女神 5




ー地元はほっとする




うちの実家は緑溢れる良いところ
空気も美味しくて、平和で



って、今だから思えるけど、あの時の陽菜はそんなTHE 田舎を出たくて出たくて出たくて
とにかくここを出ることが目標になっていた




『ママ、パパ、東京でお洒落な仕事をしたいの』
『お洒落な仕事って。陽菜、ここでもお洒落は出来るぞ?』
『あら?ママはいいと思うけど?陽菜は都会が似合う顔してるわ。ママ似だからね。ふふっ』




パパは出ていく事に猛反対
ママは陽菜が可愛い服や髪型や、メイクも大好きなのを知っていたから東京でもっと輝いてほしいって
やっぱりママは分かってる
あの時味方してくれたママのおかげで陽菜は上京することが出来た
そんなママに乗せられてパパもしぶしぶ許してくれたんだよね





『んーーーっ。ついた!ただいま』




パパに空港に迎えにきてもらって
THE 田舎の実家に到着
念願のお盆休みをもらえたからやっと地元に帰って来る事が出来たの




『おねーちゃん!』
『あー、あっちゃん!』
『おかえりー』
『ただいま。久しぶりだねー!あっちゃん髪の毛伸びたねー』
『そうなんだー。いま伸ばしてるの』




にこにこと嬉しそうに話してくれるこの子は可愛い可愛い妹ちゃん
歳は5歳下で少し離れている
あっちゃんは高校1年生になっていた
最後に会ったのは中学1年生だけど、やっぱり女の子は変わるんだ
大人びていて、お姉ちゃんはびっくりする




『あっちゃん、大人っぽくなったね』
『えーあたしの台詞。おねーちゃんはやっぱり東京が合うんだね?なんか、都会のおんなーって感じになってる〜』
『えーそう?ありがとう。ふふっ』



あっちゃんと陽菜は話し方とか性格とかあんまり似てないと思う
でもうちの妹は可愛い
間違いなく可愛いと思う




『あ、ねえねえあっちゃん。ゆうちゃん、どっか旅行とかじゃないよね?』
『え?優子??どこも行ってないと思うけど。夏休み入ってからまた飽きもせず走ってるよー』
『ふーん。そっかーー』
『どうして?』




あっちゃんがすごく不思議そうな顔をする
陽菜は言おうか迷ったけど、なんでなんでと一度気になったらとことんしつこいあっちゃんからは逃げられない




『なんでーー?』
『んーー、無視ってやつ?』
『無視?』
『そ。ライン見てるのに返ってこなーーい』
『...へーー』
『なんでかなあ』
『なんて送ったの?
『昨日ね、明日帰るよーって。だからゆうちゃん会える?って』
『ふーーん』




あっちゃんは何か考えているけれど
ふんふん。なるほどとかいって1人で納得している




『あっちゃん、なんか知ってる?』
『んーん知らない。けど、家にいるよきっと。いってきたら?』




陽菜はあっちゃんに言われて、素直にそうしよっかなと思った

隣の女神 4



ー期待なんて、しなきゃいいのに




『っつ、うっ!』




体を動かすのは昔から大好きだった
中学、高校と部活はバド部でキャプテンを務めていたけれど、そのバド部人生も終わり





『はーっ、、ふー』




部活を引退したからって訳でも無い
筋トレは好きだし、夏に走るのなんて最高だと思う
体は引き締まっていた方が絶対にいい
何もない私だけど、引き締まった腹筋を見るとほんの少しばかりの自信になったりね
結局、自己満足みたいなもんだけど




(チリンチリン!)




『ゆーこ!おーーーーい』



後ろを振り向くと自転車のベルを鳴らしながらゆっくりと自転車を漕いでくる女の子



(キキーッ)



その子は良いブレーキ音を出して私の横に付いた




『ねーラインしたんだけど』
『ごめんごめん。携帯家だわ』
『いい加減その癖やめたら?女の子が1人でいて、不審者にでも襲われたらどーするの』




自転車から降りたその子は私の隣をぶつぶつと文句を言いながら歩く
色々言われている私だったけど、最近しっかりしてきたなーなんて成長が嬉しく感じたりするんだ




『はーーもう。笑ってるけど聞いてるの』
『ああ、うん。聞いてるよ』
『もーいいよ。優子は襲われても殴り返して返り討ちに出来そうだしね。もういいやこの話』
『はははっ。心配ありがとう。あっちゃん』




この子はうちの隣に住んでいるあっちゃん
本名は小嶋敦子ちゃん
優子って呼ぶけれど、歳は2個下で、隣の家の小嶋さんの娘さん




『それよりさ、どうした?私に用だったよね』
『あ、そうそう。優子さ、花火大会、行くの?』




ー花火大会




その言葉に一瞬、固まってしまった
ほんの数日前に花火大会の夢なんて見たからだろうか
いや、違うか
毎年、この時期になるとどこかそわそわしている自分に気づいている




『んーー迷い中です』
『迷い中って事はお誘いあり?』
『んーーまあ?』
『へー。もしかしてあの子?』
『んーーーー』
『はいはいそうなんでしょ』




そっかそっか、と言いながらあっちゃんは何か言いたげな顔をする




『なに?』
『今年、お姉ちゃん帰ってくるって聞いた?』
『えっ...』




(どくん)




心臓が大きく鳴った




『ラインきてないけど...』
『うん。私にもさっき来たから。帰ったらきてるんじゃない?』
『そっかそうなんだ。帰ってくるんだ』
『らしいよー。一週間ちょっと休み貰えたから帰るって』




急に、早く家に帰りたくなってきた
帰って携帯を見たい
ラインが入っているかも知れない




『で、花火大会楽しみにしてるみたいだったからさ。優子は誰かと行くのかなって思って』
『花火見にくるみたいなもんだもんね』
『でも先約ありかー』
『....』




私はあの後、すぐに家に帰って携帯を見る




『...なんだよー』




連絡は入っていなかった
ひどく落胆する
久々に会える、と高鳴るこの胸は
きっと私だけ
ただ1人だけ




『ん、もっかい走るかー』




期待してた分、なんだか切なくなってきて
私はまた走り出す
午後14時
1日で一番暑い時間に
頭がくらくらしてきそうだ

隣の女神 3



ー暑いのは嫌い



『あっつ...』



東京は暑い
今日だって真夏日ってやつで気温は30度を超えている
家から徒歩10分
たったの徒歩10分が地獄に感じる



でも10分後、そこには天国が待っている



『あーー涼しい』
『あ、おはよ。小嶋さん』
『おはようございます。今日も暑くてやばいんですけどー』
『ねー店の中は涼しくていいよね』




朝9時30分
お店の先輩と挨拶を交わし、いつもの様に暑いですねと会話をする
7月の後半から朝はいつもこの会話が決まり文句になっていた
お店のクーラーが10分間の地獄をまるで無かったことにしてくれるのも毎日の日課



(ウィーン)



自動ドアのドアが開いた



『いらっしゃいませ』
『あの、初めてなんですけど』
『ありがとうございます。ではご記入して頂きたい事があるので、こちらにどうぞ』




長くやっているから慣れたもの
いつもの台詞と、営業スマイルでお客様の対応はもう完璧になった



朝10時にお店はオープンする
今日一番乗りで来たお客様はご新規様
目をキョロキョロとさせて、どぎまぎって表現が似合う、綺麗な女の子



(あー、高校生ね)



丁寧な字で数字が書かれ、高校生って事がわかった
見た目が綺麗だから、大人っぽく見えて、大学生かな?なんて思っていたけど、そこはさすがこっちの子
服装もお洒落にしていて、髪も綺麗なロングストレート




『ネイルサロンは初めてですか?』
『はい。自分で家でやった事はあるんですけど、上手に出来なくて...』
『あー難しいですよね。高校三年生?学校は大丈夫ですか?』
『いま夏休みなので、羽目を外そうかなって』



その子は恥ずかしそうに微笑んだ
そうか、夏休み
いい響き
陽菜だってあのうんと長い夏休みをもう一度味わいたい
社会に出てから、一ヶ月以上も休みがあった学生時代はどれだけ幸せだったんだと痛感している




『羽目、外しちゃいましょうね』
『はいっお願いします』
『じゃあどんな風にしたいか、イメージはありますか?』




目の前にいる綺麗な女の子は好きな色はピンク、でも白も好き
大人っぽいネイルをしたいと、嬉しそうに話してくれる




(夏休み、かー)




いいなー
陽菜も一ヶ月ぐらい地元に帰りたい
お母さんのご飯を食べて、DVD見て、寝て




それからー




『はい。じゃあ、イメージは決まったので早速ネイルに移りましょう』
『はい!』
『お時間は大丈夫ですか?』
『あ、この後ランチがあるので』
『わかりました。あんまり時間を掛けないようにしますからね』




お願いします。と笑う顔はやっぱりまだどこか幼さが残っている



(優子、元気かなー)




その子の見せた幼い顔があの子と重なる
今年は地元に帰れるから会うのが楽しみになっていた
偶然、目の前の綺麗な女の子も高校三年生だと言うから、頭の中の片隅で優子の事を考えてみる




(変わってるかなーゆうちゃん。そのままかなー。お土産は何がいいかな)




陽菜の短い短い夏休みまであと3日


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