SCHOOL*DIARY

悩み相談室
9月20日 18:44

担当:境 恒久

遅刻:いない
早退:いない
欠席:いない

 部活が終わっても……アレだな。
 秋は行事が多いというか、行事が増えて、部活動単位で参加するものも多いから、どうにも引退した実感が沸かない。
 この間も歩と善が

「ユニフォームってどうすんの??」
ヾ(゚◇゚)ノ

と、話し合っていたが……俺も、よく分からない。
 テニス部や卓球部のように普段も着られるユニフォームならまだしも、野球部のユニフォームは……堂々と学校名が記載されているので、進学後は先ず、着られない。練習用に着てもいいが、それでもやや問題がある。

「やはり、捨てるしかないんじゃないか」

と、俺が言うと、

「記念としてとっておこうとかゆう愛着ないわけ??」

と、善に言われた。しかし、とっておいても、どうなるというのか。エゾケンにいたっては

「こう……卒業式とかに『野球をしてた江添クンをいつも見てました』系女子が現れてだな、俺のユニフォームを欲しがるとか欲しがらないとかいっそ着せてしまいたいとか、そーゆーシチュに期待してとっておこうかと真剣に思うんだが、どうだろう、どーだろぉぉぉ!!?」

と、期待に満ちた瞳を未来へ向けていたが……銀行金利よりも低い可能性しかないんじゃないか、とは流石に言えなかった。勿論、彼女のいる志賀でも、ユニフォームプレイというのは……個人の趣味なので、俺は何も云わないけどな。
 ただ、

「友永のは? 友永のユニフォームなら欲しいって女子いるんじゃないの?」

と、歩が言い出して、それに対し、

「はい、欲しいです!」

と、エゾケンが挙手した時は正直、引いた。ゴメン、エゾケン。
 まあ……エゾケンは小学生の時から、自他ともに認める友永フリークだし(しかも恐ろしいコトに現在進行形だ)、その他、試合の度に、どこの誰だか分からない人間に取り囲まれるトモなので実際、本気でトモのユニフォームを欲しがる人間はいるに違いない。
 よく、お宝鑑定番組などでもスポーツ選手の使用済み品には破格値もつくし、将来、トモが一番プロに近い存在なのだから、今から宝物として後生大事に持っておいても良いのかも知れないなあ……と。
 しかし、当の友永と言えば、

「よせよ。俺のユニフォームなんてクセェだけだぞ」

と、もっともなことを言って一人で笑っている。
 トモはどうにも、自分に興味がないというか、反対に自分にしか興味のない男なのか、他人がどう思うかなんて余り関係はないようだ。結構、エゾケン本気デスヨ、とか思うんだが、いったところで「嫌われるよりはいいんじゃないか」とかなんとかいう、間の抜けた返答しか得られそうにない……ので、まあ、トモは放置の方向で。

 実際、トモは部長であり、エースであり、4番という茅中野球部には欠かせない存在なのだが、野球以外では結構、欠ける存在だ。

 遠征試合の際、決まってはぐれるのはトモと本丸であり、トモは気が付くと誰かに話しかけられて止まっていたり、電車では他の人に乗車を譲っている間に乗り遅れて、

「あ、」

とかいう間に俺達の乗る電車が友永放置プレイをやらかしてしまったりする。
 一方で、本丸は勝手に興味をもったもののトコロへいってしまうので、乗り換え時間がないというのにキヨスクで何か買い始めたり、会場では似たユニフォームのチームへ紛れていたりするので、まあ、色々気苦労は耐えない。
 一応、トモにはエゾケン、本丸には君島がついているのだが……どうにも、困った二人だ。両方、体はデカイので見つけやすい点だけは良いけどな。

 そんなトモなので、部長としての信頼はあるが、先輩としての信頼はあまり無いらしい。何より、トモに野球の質問をすると、泣きたくなるような答えが返ってくる。
 この間も、

「ぼくは、ホームランがうてません。どうすれば、ホームランがうてますか」

と、いう小学生(というか、リトルの時の後輩)に、

「ボールに当てればいい」

とか言う、至極、トモらしい答えを述べていた。
 まあ、その後、

「だからボールにあたらないんです」
「なんでだ?」
「わからないから、きいているんですよぉ」
「そうか……ボールをよくみるとか」
「みてもあたりません」
「難しいな。見れば当たる」

と、問答が続いていたが……トモの場合、本気で思って居るから末恐ろしい。こればかりは動体視力や天賦の才が大きく関わるので、俺達としてはなんとも言えない部分なのだが。
 で、結局、トモに野球の質問をする人間なんて君島くらいしかおらず、君島はトモ言語がわかる人間なので、トモ次元の野球にもついていける有難い存在だ。
 しかし、その君島も野球以外の質問をどうするか……というと、滅多にトモにはしないらしく(まあ、当たり前だ)、専ら他の俺達みたいな上級生にしてくる。
 先日も、本丸が珍しく深刻な顔をして、

「悩んでること、あるんすよ……」
……( ̄△ ̄lll

と、きたため、一応、話を聞いてやると、

「航がオレのこと、さけてるんすよ……」

と、まあ、落ち込みMAXで言うわけだ。
 どうせ、嫌われるようなことをしたんだろう、と言っても「なにもしてない」と頑なに首を振る始末。何もしてない人間を嫌うような性格の君島とも思えず、一体、どういう状況で避けられたんだと更に聞けば、

「ホント、いつもと同じっスよ! この間、部活が無かった時、一緒に帰ろうと思って、迎えに行ったら、さけらたんスよ」
「変なコト言ったんじゃねえのか?」
「だーかーらぁ、いつもと一緒なんスよ! マジで! 航、いっしょ帰ろって、いっただけでガン無視っスよ!? で、その後も、なんか、あんまマトモにクチきいてくれなくて……なんか、聞いてませんか?」
 
と、言う。
 確かに、本丸が「ワタル、ワタル」言うのはいつものことなので、取り分け不審な点はないのだが……一応、

「まあ、あとで、君島になんとなく聞いてやる」

と、告げて逃げてみたところ、今度は君島の方から俺のところにきてくれた。
 ここで、トモや他の部員でなく、俺を選んでくれたあたり、俺の人望の高さが伺えると言うもの。喜んで質問に応じよう、と思ったのだが……

「あの……すいません。境さんなら、須野原さんと仲が良いし、なにより、動じないかなと思って……相談に、きました」

……て、おや? 人望は関係がないのか? それより、なぜ、善? と不思議に思いながら君島の話を聞くと、

「凄く……変な話で申し訳ないんですが……なっちゃんのことなんです……あの、なっちゃん、何か言ってませんでしたか?」

と、やはり内容は本丸のことで、事実、先に話を受けていたので「避けられていると嘆いていた」ことを伝えると、君島は深く溜息をついて、

「やっぱり……いくら鈍いなっちゃんでも、気付きますよね……。実は……今、女子の間でBLっていうのが流行っているみたいなんです。BLってボーイズラブの略だそうで、女子が、凄く楽しそうに受けとか攻めとか言うんです。それだと、俺は受けで、なっちゃんとカップルになるそうで……凄く大きな声で話して居るから、聞きたくないんですが、耳に入って来ちゃって……女子がそういうふうに俺達を見て居るのかなって思ったら、なんかなっちゃんと普通に話せなくなっちゃって……すいません。こんな話、どうすればいいのかわからなくて……」

と、勢いよく話だしだしたかと思えば、また溜息をついて今度は沈黙してしまった。野球部的には受けなどない! 先攻後攻、攻めのみだ! と、返したいところだったが、そんな雰囲気でも無く、ひたすらに、嗚呼、と。
 
 そ、そうか……。

……lli||il_| ̄|●iil||i|l

 言われて見れば、女子がそういうよくわからないものを見ていたのを覚えている。ウチのクラスでも、1組の吉留あたりと、そういう本を大量に貸し借りしている女子がいるし、本屋でそういう表紙を見て驚いたこともある。しかも、野球漫画の隣に(なぜだか)置いてあったりしたから、見る気もないのに目に入り、歩だけが、

「わー、ウチの兄貴みたいなのも、シミンケンとか得るジダイにトツニューしちゃったわけ? つか、オレ、テイソーの危機??」

なんて、大笑いしながら見ていたが……う……ん……正直、俺達は固まってしまい、エゾケン至っては

「大変だ! こんなのがはやったら、将元の危機じゃねえか!」

と、彼にしては珍しく的を得て居るような、いないようなことを言って大騒ぎし、本屋の店員に怒られた。

 しかし、そういう世界は一部特殊な、早い話、俺達には全然関係のない話だと思っていたのだが……そうか……ああいう漫画のようにキラキラしていない、ムサイ野球部でもアリなのか……と、女子の許容範囲の広さに驚く。
 言われて見れば、君島は……キラキラ男子(小坂部とか今川とか、あの辺り)というわけではないが、キレイメの顔立ちだ。ついでに、本丸はバカだが、本当にバカだが、どうしようもないバカだが、黙っていればソコソコ、野球をしている時なら女子からの声援も少なからずあるタイプだ。しかし、バカだが。本当にバカだが。まあ、シベリアンハスキーみたいな奴だ(シベリアンハスキーも余り頭がよくないと聞いたので丁度良い)。

 で、まあ、女子はそういう男子でも……キラキラしてなくても、盛り上がれるものなんだなあ……と関心しつつ、だが、君島に何か云わないと悪い気がしたので、とりあえず、

「俺達、男子も好みの女子を見れば、何かしらそーゆーコト考えるわけだろ? だから、言論と思想の自由っつーか、仕方ないと思うしかないんじゃないのか? 寧ろ、意識的に本丸を避けた方が、女子としては更に妄想かきたてられると思うんだが、違うか?」

と、答えてみた。
 すると、君島は何事か呟いてから、「そうですよね……そういわれれば、そういう気がします」と、神妙そうな顔立ちで帰って行った。
 そして、俺自身、自分と善を考えて見たのだが……いや、それはないだろう! とか、善は俺より団子だとか、まあ、考えているうちに大分、君島の気分にシンクロしてしまい困ってしまった。
 
 もし、男二人で仲よくしているだけで組み合わせられると言うのなら、もう、とっくにトモとエゾケンはアレなカンケイになりそうなものなのだが、そういう話を一切聞かないのは、やはり二人ともキラキラ男子ではないから、というか、両方デカイからなんだろうか、とか色々(本屋で見た組み合わせだと、どっちかが女みたいだった)。
 
 ううん……考え出すと、面白い!
 +.(・∀・)゚+.゚

 女子で妄想したことはあるが、自分が妄想対象になるなどと、考えて生活している男子は少ないだろう。改めて、女子の凄さを実感した。

 ともすると、文化祭や体育祭の出し物に、そのあたりを組み込めば女子ウケがよくなりそうな気がするが、しかし、そういうことを考えている女子は実際、彼氏募集中なんだろうか……募集中なら良いが、違った場合の精神的ダメージは大きい気もする。
 まあ、どちらにしてもまだ、文化祭だの体育祭だので、あと数回ユニフォームを着る機会があるし、完全に着なくなってから、ユニフォームをどうするか考えよう。そして、エゾケンに「もし卒業式にユニフォームを貰いに来たのが男子だった場合」どうするのか、面白そうなので聞いてみようと思う……楽しみだ。


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