SCHOOL*DIARY

美意識過剰
11月29日 21:57

担当:長谷 享

遅刻:したなら来るな。
早退:するなら来るな。
欠席:一番、正しい。

 ……そんなことで、悩んでたのか。
 いつになく、吹雪が真面目な顔でノートを渡すから何かと思えば、ねえ? 第一、目を負傷した空手大会なんて、何年前の話だよ。僕は基本的に過ぎたことに拘りはないんだ。吹雪がいくら謝罪したところで僕の目は元に戻らないし、別に僕はそれで良いと思ってる。ベドウィン的に考えれば、「僕の目はあの日、怪我をする運命にあった」、これで充分じゃないか。空手なんて始めたときから負傷する覚悟は出来ていたし、僕が完璧に防御すれば防げた傷だし。だから、謝られると僕自身を叱責されている気分になるから憂鬱になるんだよね。自分が意志を持つ人間である以上、100%被害者、なんてことはレアケースだし。どうせ謝られるならば、先ずは本の管理だよ! と、いうか、物品の管理! あれをどうにかして欲しい。
 吹雪は、

「んな、本の間のカスくれー、どーでもいーじゃねぇか」
ヽ(`Д´)ノ

っていうけどね、僕としては、そのカスだからこそ許せないんだよ! どうして、他人の物を平気で汚せるのか、その神経が理解できないね。個人的には、許可無く他人から私物に触れられるってだけでも非常に不愉快なのにさ。
 他にも吹雪には大雑把なところが沢山あって、この間も暇だからって一緒にオンラインゲームをしてみれば……


 何 だ よ あ の 
 装 備 の 趣 味 は !
( ;゚皿゚)ノシΣバンバン!!

 悪趣味なんてものじゃないよ! 
(((((;`Д´)≡⊃)`Д)、;'.・

「金が無くてさー」
(=´∇`=)ノシ

って、それだけの理由で、どうしてプラチナメイルを装備しながらゴム手袋で戦う勇者が罷り通ると思っているんだ! 許せない! なんて美しくない勇者なんだ! あんな勇者に殺されるスライムの気分にもなれよ! どうせ一生を終えるなら、美しく散りたいと思うだろう? それはスライムだってゴーレムだってドラゴンだって同じだよ! ああ、もう、しかも誰の目に触れるかわからないオンラインゲームだって云うのに、どうしてハンドルネームに

 ひょおっとこ☆

 とかつけるんだ!! どんなに強く発音しても力の抜ける響きに加え、ヒョットコならヒョットコで「お」はつけなくていいっていうのに、

「あ、まちがえた」
(=´v`=)

って、なーおーしーなーさーいー!!!!
ヽ(`Д´)ノ

 僕は怒ると母と同じ口調になってしまうんだよ! ああ、もう! ひょおっとこ☆ なんて緊張感のないハンドルネームの戦士に倒されるラスボスの気持ち! それこそ、刹那さ乱れ打ちだよ! 
 己の美学だけで、世界なんて征服した処で雑務だけが残っているというのに、進んでそんな面倒くさいことを背負うばかりか、更には嫌われ役まで請け負い、戦いの最後には破格の賞金と経験値を与えてくださるラスボスの住む宮殿の、待ち侘びた最後の訪問者が
 
 ひょおっとこ☆

 じゃ、死んでも死に切れないよ! 向こうは延々、長いときは数百時間も自分を殺す者の訪れを待ってくださる気の長い方だけど……だからこそ、どれほどか待ち侘びた終焉なんだよ!? それを、ひょおっとこ☆ って、ひょおっとこ☆ って……せめて、星を★にすれば、まだ重さもでたっていうのに、そんな☆なんて一等星、名前につけても許されるのはつのださんとその、ご家族だけだよ……。

 もう、この悲しみは絶望よりも深いものだね!  

 嗚呼……なのに、吹雪は……というか、髑髏メンバーのだれもこの↑話を笑って流すというのはどういうことだろう。美意識が崩壊している由々しき事態だというのに、

「勇者の名前か! 懐かしいなあ……俺はいつも『100%』ってつけてた」
(`・ω・´)ノシ

って、城戸さん……。
 
「じゃ、『会心の一撃』が『100%の会心の一撃』になるじゃねえっすか! 勇者100%って、も、勇者以外の何者でもねぇっすね! パネエ、さすが、城主!」
+.(・∀・)゚+.゚

 って……うん……そうだけど、吹雪、そこ、キラキラした目で食いつくところじゃないから。なんか果汁100%とか、苺100%みたいなノリになってきてるから。
 こう……トップの趣味が趣味だと、下にも影響が出るっていうか、どうにも髑髏にはそういうよく言えばのんびり、悪く言えば非常に大雑把なところがあって……僕としては……名は体を現すって言うくらい重要なものだと考えているから、たとえハンドルネームといえどもしっかりと考えた方が良いと思うんだよね。
 だから、スコアネームも以下同様で……余りふざけたスコアネームを入力するヤツはなるべくスカウトしたくないなあって思うんだけど……まあ、スカウト担当は吹雪だから、取り敢えず僕は見ているだけ、なんだけど。

 一応、髑髏も支部ごとにそれぞれ役割があり、僕たちにも役職がある。
 今現在は僕が情報担当で、吹雪がスカウトってコトになってるけど……うん、これは実に良い配置じゃないかと思うんだ。
 ただ、吹雪は「一度、手合わせすれば強さ分かるだろ」って直ぐに私闘に持ち込もうとする短絡思考だから、城主は予め私闘禁止にしたのだろうし、スカウト条件を指示したのかも知れない。

 見栄や権力に憧れて髑髏に入隊したいというヤツは少なからず居るけれど、髑髏は保護する立場だから自分で自分を守れなくては話にならない。

 だから……まあ、ある程度、強くて、更には特殊能力のある人材が好ましいけど、強いヤツも……ねえ? 一番、手っ取り早いのは各種武道大会でのスカウトだけど、本当に武道を嗜んでいる者ほど暇じゃあないし、自分の身体の価値を知っているから余り応じてはくれない。
 それに、実際、経験がものを云う部分もあって、武道関係者以外にも強いヤツがいたりする。で、そういうヤツを見つけるのに便利なのが、

「うぉぉぉ!!! スカウター!!! トール! お前の変なメガネ! あれ、スカウターなんだろ!?」
ヮ(゚д゚)ォ!

 えーっと……ドラキチっていうか、アホの仔は放置の方向で。
 まあ、現実にはパンチングマシーンみたいなものが分かり易いんじゃないかな……ってバイトを始めた……と、云うと、凄く考えたバイト先みたいだけど実際は、残念ながら地元(与郷地区)にはバイト募集(と云うより、まず店舗)がないし、どうせなら駅に近いほうが良いし、冷暖房完備が良いなあとか云ってたら、城主が斡旋してくれたってだけの話なんだけどね……。
 そして、また、本当にゲーセンのパンチングマシーンには連日、腕試しがやってくるわけで。

 倉賀野は、そんなある日、突然やってきたヤツなんだ。

 もう、スキンヘッドにサングラスってだけで一瞬、構えるってもんだろう?
 その上、見かけ通りに最高スコアを叩き出してくれれば、ねえ?
 もう、スカウトするしかないわけで。

 吹雪は、倉賀野を見た瞬間、血沸き肉踊る感覚(って、カニヴァリズムみたいだよねえ?)でゾクゾクしたみたいなんだけど、僕としては、その後の、倉賀野の言葉の一つ一つに胸がときめいたことを覚えているよ。

 何しろ、当時、倉賀野は中学生だったからね! 

 学区外のゲーセンにしっかり名札をつけて現れる中学生! 聞けば、

「あ……司馬区内、は……その、ゲーセン、が……」
 
 少ないというか、司馬中並びに司馬小のPTAがうるさいというか、やたらと教育熱心な方々ばかりで学区内のゲーセンを殆ど小学生でも遊べる健全なアミューズメント施設に作り変えたと言うか、まあ、クレーンゲームとプリクラとエアホッケーくらいしか設置させないように指導をしたためストレス発散できるようなものがなく、仕方なし駅前まで来たって話を、まー、ボソボソと延々1時間くらい掛けて当時の倉賀野は話してくれたわけなんだけれど。
 しかもストレスの原因が、

 上手くタイミングが図れない

 なんのタイミングかといえば……


 楽 器
+.(・∀・)゚+.゚


 であり、実は倉賀野、スキンヘッドでサングラスな




 吹 奏 楽 部 員
(人´∀`).☆.。.:*・゚


 
で、あることが判明。
 聞いたときには、ね! もう、ね!!!! 
 即行で、入隊決定したい気分だったよ、僕は!(倒置法)

 他にも、色々と聞いてみたところ、まあ、スキンヘッドにした理由は

「寝癖……つく、と、困る……から」

 であり、サングラスの理由は

「目つき、悪い、し……目……あ、目があう、と緊張、する」

 って! 素晴らしい、素晴らしいよ、倉賀野!!!
 僕はそういう、繊細な人間を待っていたんだよ!!!

 たとえ、その時、語る声が地鳴りのように低かろうと、照れると頭皮まで赤くなるから、あれだね、海底に沈む軟体生物を連想させるね、とか思ったりもしたけれど、とにかく、倉賀野は僕の好みだったわけだ。
(尚、吹奏楽部への入部動機も尋ねてみたところ、「口、塞がって、れば……しゃ、喋らなく、て、いい」と、徹底した返答。これも素晴らしい)

 きっと、彼ならば貸りた本にブックカバーをつけて読むのではないか、と期待しているのだが、どうだろう。
 
 そして、今時分になると、街は(キリスト教徒なんて日本国民の数パーセントにしか満たないっていうのに)クリスマスムード一色になり、倉賀野は、

「冬コン、が、ある、から……」

と、俄かに忙しくなり、髑髏ではクリスマスだ、忘年会だ、新年会だ、餅だ、粥だと、怒涛のイベントラッシュになるわけなんだけど……もしかして、全員、単に暇なだけなんじゃ……。まあ、僕としては行事に異論はないけれど、ただ、何をしても最後には必ず鍋になり、そして、結局、煮ぼうとうを作る茅根性をどうにかして頂きたい。
 僕としては、クリスマスには七面鳥……までいかずとも、チーズフォンデュくらいしても良いと思うんだ! なのに、なんでケンタでサンタでファンタなんだ! ああ、もう、本当に美しくない!
 


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