「何処だよココ...」
青年― 城戸真司は困り果てていた。さっきまで取材先に向かっていたはずなのだ。
それが今や見覚えの無い路地裏にいた。
「なんだよこれ...とりあえず電話を...!?」
ケータイを取りだそうとポケットに手を入れると、そこに妙な感触があった。
「?」
取り出してみると、それは名刺入れのような物だった。ただ少し大きい上に硬い。
「なんだ?龍のマーク...か?」
ーその瞬間ー
思い出したくも無い記憶が甦った!
「グッ!?...う...あ!?ま、マジ..か!?」
終わったはずの戦い、尽きたはずの命、そして...全てが無に還ったはずだった。
「Vバックル...何でだよ」
「おい、お前」
いきなり声を掛けられて驚く。振り返るとお巡りさんらしき人がいた。
ーらしき、というのはその制服が明らかに日本の警察のものではなかったからだ。
「何してる?こんな時間にこんな場所で」
「え!?あー...と」
ヤバい、と思うが違和感も感じた。
なんで外人さんの警官が?しかもずいぶんと日本語上手いな。
「観光か?こんなところは出歩いちゃ危ないぞ」
「あの〜」
「なんだ?」
「ココどこですか?それと...日本語上手いですね。日系の方...ですか?」
警官の表情に?が浮かんだ。
「何言ってる?俺は日本語なんかしゃべっていないぞ。お前まさか」
「いやいや!違いますよ!?俺は普通ですから!」
「...まあ良い。早くここから移動しろ」
真司は頭を下げるとそそくさと移動することにした。
「まさか...コレのせいか?」
Vバックルを見つめる。便利だ ーと思うがやはり有り難くはない。
その時だ。二度と聞きたくない音が辺りに響く。
キィィン...キィィン...キィィン
「嘘だろ...クソ!」
手近な窓にVバックルをかざすと真司は叫ぶ!
「変身!」
紅い龍の影を纏う。血が沸騰する感覚がする。久しぶりの、そして二度と味わいたくない感覚。
「ッシャッ!!」
仮面の上から鼻をこするような仕草をすると窓に向かった ーが。
何故か窓の向こうの世界...ミラーワールドには入れなかった。
「な、なんで!?」
そう思う間もなくサメのようなモンスターが窓の「内側」から現れた!
慌てて避ける。サメのモンスターも真司は無視して上に上にと昇る。
「ま、待て!」
そう言う真司の隣を1台のバイクが走り抜けた。ライダーは黒いスーツを纏っている男というのは分かった。
「え!?」
そのバイクは ー壁を登り始める。その先にはサメのモンスター!
「何かは知らんが...ブルードヘイブンじゃ良くあることだな!」
バイクの男 ー ナイトウィングはビルをかけ昇るとモンスターに踊りかかった!
真司にしてみれば夢を見ているようだった。ミラーモンスターに対抗出来るのは仮面ライダーだけのはずだった。にもかかわらず、ナイトウィングは互角に戦っていた。
「おい、お前!」
声を掛けられてハッとする。ナイトウィングから呼ばれた。
「ぼさっとしてないでトドメを刺せ!」
「あ、お、おう!」
カードを引き抜き赤龍ドラグレッダーを呼び出すと間髪入れずもう1枚カードを読み込ませる。
「ファイナル・ベント!」
左手の籠手 ードラグバイザーから発せられた声に合わせて構えを取ると
「オオオリャァァァァー!!」
上空に向けて一気に跳ね上がり、いつもと違い更に上に舞うようにドラグレッダーの炎を背に受けた。
街の遥か上空で爆発が起こる!
ビルの屋上に降り立つとナイトウィングが声を掛けてきた。
「派手な花火になったな...上に蹴りあげたのはいつものことか?」
「イヤ、普通にやったら不味いかなって...」
「良い判断だ。伊達にカメンライダーじゃないってことか」
「え!?仮面ライダーを知ってるのか!?」
問いに答える代わりにナイトウィングはバイクに跨がるとこう言った。
「眠れない街へようこそヒーロー。だがこの街は一筋縄では行かんぜ?」
それだけ言うとあっという間に走り去る。
「何なんだ、いったい...」
「全ては兄のせいよ」
その声は
あり得なかった
消えたはずの少女
神崎優衣 だった
龍騎/バットマン その5
龍騎/ナイトウィング