「あー……どれにしよう」
無情に灯る売り切れの文字。天然水のボトル下、押したいボタンは指先を拒む。水がダメなら何がある。ウーロン茶に緑茶、コーラにスポーツドリンク。どれもイメージにない。
サークル室に来るなら飲み物を買ってきてくれないかという菜月先輩のおつかいは、張られた罠に見事に引っかかってしまった。菜月先輩がいつも飲んでいる水が売り切れている。
講義棟から徒歩15分。その道のりを戻るか? いや、往復30分はさすがに。考えすぎた結果入れた小銭も戻ってきてしまった。仕方ない。素直に謝ってローキックをいただこう。水は売り切れていたのだから。