美奈が黙々と手を動かしている。課題でもしているのかと思ったら、頻繁に筆記具を変えていた。不思議に思って覗き込んでみればその作業は課題とは程遠く。
「美奈、何をしてるんだ?」
「塗り絵……」
「それは見ればわかるが、どうしてそれを今」
「……前から、興味はあった」
何でも、巷では大人の塗り絵たる物が売り出されているらしい。塗り絵と言えば子供の頃に大柄な絵に色を付けていた覚えがあるが、今美奈のやっているこれはとても線が細かい。
物珍しいのか、石川も興味深そうにそれを覗き込んでいる。何だ何だと高井も野次馬をしに来る。どうせならやってみるか、と美奈がその塗り絵を人数分コピーして来た。