「もうちょい上ー!」
「ヒデさん、もうちょい左お願いします」
「こう?」
「あーちょうどっすパねえっす! ツルさーん! どっすかー!?」
「オッケー!」
緑が生い茂る木の枝に赤い風船を括りつければ、準備完了。カメラを構えたツルさんがそれを撮影すればひとつのカットになる。
ただ、風船をずっと木の枝につけっぱなしなのは良くない。どうせすぐ外さなきゃいけないし、位置の微調整があるかもしれない。だから俺はずっとヒデさんに肩車してもらったまま。
外でのヒデさんは“もじゃ”と呼ばれている。それがもじゃもじゃの髪質から来ているそうだけど。確かにこれは“もじゃ”な髪質。