「ノサカ、夏至やよ」
「そうだな」
「ボクの誕生日でもあるよ」
「それがどうした。お前の誕生日は今度の日曜日につばめの誕生日と一緒に祝う会を開くじゃないか」
「ボク誕生日なんやけど」
周りからは、カタカタとキーボードを叩く音が聞こえる。そう、何を隠そう今現在はまさに授業中。講義自体はもう終わって、今は課題をやる時間。これを片付ければ教室から出てもいいというシステムのヤツだ。
学部固有の授業だけあって、ヒロも同じ講義を受けている。ただ、さっきからちょいちょい話しかけてくるのが何ともなあ。教室に響くキーボードを叩く音だけど、隣からは聞こえてこないんだよなあ。
「ごっちゃんせんぱーい! バンバンッ!」
「あー、撃たれたー」
フフン、と松葉杖を構えてご機嫌なのは、三浦祥子。俺とは高校の先輩後輩で、大学で絡まれた時はちょっとビビった。大学じゃ大体ゴティって呼ばれてるけど、サチは変わらずごっちゃん先輩と俺を呼ぶ。
パッと見アホの子だし、脳に行く栄養が全部身長に行ったんじゃないかとか、そんなようなことを思ったこともある。それっくらい悩み事とは無縁そうと言うか、元気な子だなーって生温かい目で見てやるべき後輩というヤツだ。