「それじゃあ、越野の帰省と俺たちの再会に、かんぱーい!」
「乾杯」
ガツン、とジョッキがぶつかれば、宴の始まりだ。大学進学を期に向島を離れた万里――越野万里が帰省してきた。万里は高校1年の時のクラスメイトで、以降文理選択の都合でクラスが離れてからも仲が良かったダチの1人だ。
乾杯の音頭をとった拳悟とは同じバスケ部で、コート上でもそれ以外でも相棒のような間柄だった。拳悟がやたら万里に懐いていて、毎朝1階の1年4組から2階の2組まで万里に会いに来ていたのを思い出す。
万里は帰省にあまり時間がとれなかったらしく、こっちでも多忙なスケジュール。墓参りと少しの買い物、そして俺たちと顔を合わせるのと。万里は今日のこの会をとても楽しみにしていたらしい。会場は拳悟がセッティング。万里ん家近くの飲み屋だ。