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【SSS】冥府のほとりの陽だまりで

「こないださあ、宏樹が車に女を乗せてたんだよ」

 深刻そうな顔でちづちゃんが話を切り出す。その顔にかかる影は、出てきた名前にふさわしい。俺が長野っちと面識があるからっていう理由の相談なんだろうね〜。でも、長野っちってああ見えて人当たりもいいし、女の子の友達くらいいそうだけど。
 お茶を一気にぐーっと飲み干したカップに、おかわりを注ぐ。それでそれで〜、と、次を引き出していく。長野っちの近況については俺も気になるところ。同じサークルだからこそ知ってることとかも聞いてみたい。


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【SSS】跨ぐ境界線の色は

「珍しいな、高崎がご飯行くのに俺に声かけるなんて」
「俺だって自宅生に声かけんのは躊躇すっけど、他に捕まりそうな奴がいなくてよ」
「正直だな。いいけど」

 高崎が携帯片手に喫煙所にいたから、いつものように隣に座った。何かを考えるような素振りだった高崎は、俺の顔を見るなり「飯食いに行かねえか」と。断る理由はなかったから、了承した。
 俺が思う限りでは、高崎はご飯を誰かと食べたい方だと思う。サークルが終わった後は「飯行く奴」と挙手を取るのもお決まりの光景。俺はそれに手を上げることはほとんどないけど、カズやタカティなんかの一人暮らし勢がよく一緒に行っていると思う。


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【SSS】禁忌の扉

 恐ろしい物を見てしまった。咄嗟に辛うじて部屋の中を見ていない沙都子の前に立ちふさがり、何が起こっているのか見えないように。ボクの後ろでは沙都子が直クンどうしたのーって不思議そうにしているけど、沙都子は部屋に入らない方がいい。
 ヒビキ先輩は一歩引いて状況を静観しているけど、紗希先輩が怖い。紗希先輩から漂うオーラは本当に怒っているときのヤツだ。夏合宿でも見た本物のオーラ。3年生も引いてしまうこの事態。沙都子は相変わらず直クンどうしたのーと。


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【SSS】功徳の重ね方

「抜け駆けや! 何やのノサカのアホ! 鬼! ウザドル!」
「お前誰がウザドルだ!」
「せやった、ウザいだけやよ!」

 例によってわあわあ喚くヒロのパターンはお決まりのヤツ。いつも言っているように俺とお前の成績に雲泥の差があるのは日頃の行いであって、決して俺が賄賂を送っているとか教授がお前に嫉妬しているとかではない。
 秋学期が近くなると、さてどうすると考え始める履修のこと。まだまだ一般教養を取るだけのコマ数的余裕はないけど、それでも学部固有の中からであればまだいくらか選択の余地がある。


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【SSS】働く街の望むこと

 アタシが派遣でよく行ってる倉庫が繁忙期に入った。よっぽど無理な日以外は朝から夕方、場合によっては残業もアリのフルで入ってる。アタシの他にも派遣の人が何人かいるし、バイトの人もいつもより多い気がする。

「はああ〜っ」
「どうしたのちかちゃん」
「あ、伊東さん」

 そんな中、浮かない顔をしてるバイトの子がひとり。年が近いという理由でそこそこ仲良くやってるちかちゃん。歳は1コ下。仕事も出来るし体力もある。その上愛想までいいということで社員さんやパートさんにも可愛がられている。
 そんなちかちゃんがこんなに大きなため息をついているからには、きっと何かあるのかもしれない。体力は人一倍あるちかちゃんだけに、もう疲れて動けないとかではなさそう。お腹すいたのかな。


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