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【SSS】あなたの小宇宙に祝福を

 12月31日、やがて年を跨ごうかという時間帯。星港の街は未だギラギラと輝いていて、この広場にも多くの人が集まっている。私は路上のライブ会場を前に、最前列のポジションを確保して座っていた。
 これから行われるのは春山さんに対するドッキリという名目の路上ライブ。私は実家の方で遊ぶ誘いがあったけど、どーしてもこのライブが見たくってそっちのお誘いは断りを入れた。
 雄介さんは雄介さんで、春山さんへの復讐という目的に燃えていた。その手段としての音楽。その復讐はどす黒い想いからではなく、どことなくドヤ感が滲んでいる。「アンタのいない場でオレたちはこんな楽しいことをしていますよ、ざまあ」的な。


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【SSS】蓋の下のコラプサー

 空に向かってもくもくと上がる煙に、火薬の臭い。空気が澄んでいるから星もよく見える。今は高校の校庭で年を越しながら花火をやろうというイベントの最中だ。俺は火の消えた花火をバケツに入れて、次の花火を持つ。
 元々は何個か下の学年の奴の企画らしかったんだけど、文化祭実行委員の奴がシンに連絡を入れると話がだんだんと大きくなっていった。そうやって始まったのが、知ってる奴も知らない奴も入り乱れての花火大会。

「ロイドくーん! そっちネズミ行ったぞー!」
「うわっ、マジかよ!」
「あはは! 逃げろ逃げろ!」
「ロイド君爆竹あるけど投げたら避ける?」
「バカ野郎ふざけんな!」


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【SSS】その割には太く長い

 年末になると、さすがに俺も実家に戻ってそれらしく過ごすことになる(慧梨夏も遠征していて留守にしているし)。俺は京子さんからのおつかいで浅浦家へ。腕まくりをして気合の入ったパパさんが、来る大晦日に向けた準備をしているところだった。

「パパさーん、これ、京子さんから。例のヤツだって言えばわかるって言ってたけど」
「あー、ありがとね。京子さんにもよろしく言っといて」
「はーい」
「あっそうだ。カズ、明日の蕎麦だけど上に乗っける天ぷらの具、伊東家の分みんなに聞いといてね。なんなら今から雅弘と買い物に行って来てくれれば助かるけど」


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【SSS】掴みのリビング

「すみませんお母さま、お世話になります」
「どうぞどうぞ! さ、上がって! フミー、こーた君来たわよー」
「あっ、こちら、2日間お世話になりますのでよろしければ」
「あら、そんないいのに。ありがとう」

 寝起きでまだ頭がぼーっとする。ペタペタと階段を下りれば玄関先で母さんとこーたがきゃいきゃいとお喋りをしているではないか。こーたは親世代の人とは仲良くなるのが早いと言っていたけど、うちの母さんにも謎に気に入られてるんだよなあ。
 今日こーたがうちに来たのは、例によって弟カップル絡みでこーた以外の家族が旅行に出てしまったからだ。1人でも過ごせるけど、元々遊ぶ予定が入っていたのだから食事も一緒に、などとあれよあれよと話が進んだのだ。


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【SSS】この場所では油断と呼ばない

「おー、菜月ー!」
「亮介ー、去年ぶりやんなー! えっと、ヤスは?」
「ちょっと遅れるから先やっといてーやって。店行くか」
「やね」

 夏振りに実家に帰ってきた。年末だからと言って特に何をするでもなく、強いて言えば悪友と忘年会をやるくらいだ。悪友の片割れで、今は青丹エリアに出ている橘亮介とまずは落ち合う。奴は高校の同級生だ。
 こっちに友達があまりいないというか、わざわざ会おうと思うような間柄の人間がいないと言う方が正しいかも知れない。進学の度に友達関係はリセットされるけど、それで残る人は友達と自信を持って言える。


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