目の前に出されたのは、ごくごく普通のカレー。具は少し大きめで、食べごたえがありそう。不味くはなってないと思いますという言葉に、改めていただきますと手を合わせて。うん、変な感じがする。
対策委員の会議終わりにタカちゃんの部屋に立ち寄った。エージも一緒に。お酒とお菓子を買い込んで、さてご飯はどうすると。すると、タカちゃんが「昨日のカレーならあります」と。
そんなこんなでアタシとエージはタカちゃんの作ったカレーをご馳走になっている。だけど、タカちゃんが自分で作った物をご馳走になるというシチュエーションにアタシもエージもこの世の終わりを予感する。天変地異、青天の霹靂、何かそんな。
「ユースケ!」
「どうした、騒々し」
い。
そう言い終わる前に、烏丸さんは林原さんを壁際に追い詰める。
やることを大体潰して、今は自習室の掃除中。今日はシフトに入っていないはずの烏丸さんが、どうして閉めの作業をしているセンターにやってきたのか。それと、林原さんにいわゆる壁ドンをしているのか。
「俺さあ、思いついたんだよ! 見て見て、巻き尺! ボタンを押すとシューって戻るんだよ! すごいでしょ!」
「ねーよっぺー」
「ど〜したの〜?」
「あのさー、航平のインスタとか見てるとさー、部屋にスペイン語の本とか結構あるみたいだけど、海外も視野にあんのかなーって」
突然伊東クンが何を言い出したかと思えば、航平が海外移籍だって〜? ほら、これなんだけどさーと伊東クンは航平がやってるインスタグラムの写真を見せてくれると、確かに航平の部屋と思われる場所に外国語の本がある。
伊東クンとはIFサッカー部っていう派生団体を一緒に立ち上げた仲で、今日は伊東クンの撮り溜めたゲームを鑑賞するっていう会。そして画面にはピッチを駆ける弟、航平の姿がある。伊東クンは航平のファン。兄としては嬉しい。
「リン! お前これどーした!」
「あー、アンタに見つかってしまいましたか」
「テメー絶対わざと置いてただろ!」
林原さんと春山さんの掛け合いを久し振りに見た気がする。懐かしいと言うか、何と言うかほっとするなー。怖いはずなのにほっこりするって何なんだろうなー、ワケわかんないやー。
春山さんは、林原さんが机の上に置いていたCDに食いついている。きっと2人の趣味が合う物なのかな。ジャズとか、そっち系かなー。俺もギター始めたことだしちょっと聞いてみたいなー。
「つばみ〜!」
「つばみ言うな」
「つばみマジパねえんだよ、パねえから聞いてくれー!」
「ハマ男黙れ。知り合いだと思われたくねーわ」
あー、やっぱ出てきてやるんじゃなかった。ハマ男が切羽詰まった感じで出て来いって言うからしゃーなしで出て来てやったらいきなりうっさい。
出てきてやったからにはコーヒーはハマ男持ち。それも「全然いーし! だから話聞いてくれ」と、そんなにすぐしなきゃいけない話なのかって。例によってパねえばっかだし。