文鳥カフェのついでに俺に会いに来たらしい水鈴が帰る時間になった。星港から光洋まで新幹線で1時間ちょっと。案外簡単に来れる距離だ。こっちでも何だかんだ振り回され、新幹線のホームまで見送っている。
大学を卒業後、水鈴はタレント一本で行くことになっている。今は情報番組の仕事を1本持っていて、話題になっている物や場所に行って体験したことのレポートが主らしい。ただ、本人の希望はあくまでイベントMC。まだまだこれからだそうだ。
俺は義肢の研究開発の道に進むことになっている。入社式はこれから。研究施設と言うよりは、町工場と言うのに近いかもしれない。だけど、スポーツ用に肉体労働用、もっと細かいシチュエーション。細かな要望に応えられる仕事に惹かれた。
「やァー、気紛れで引いたら出たンで奈々にあげヤす」
「きゃーッ! いいんですかいいんですかッ! りっちゃん先輩いいんですかこんなかわいい物をッ!」
「自分が持っててもしャーないンで」
「きゃーッ! 大切にしますねーッ!」
奈々がきゃっきゃと喜んでいる。何が起きたのかにさほど興味はない。ただ、律が何かを渡していたようにも見える。ガチャガチャのケースだろうか。奈々が喜んでいるよりも律がガチャガチャをするというシュールさがヤバい。
今日はMMPの3年生追いコンで、ボウリングからの食事会(酒はない)に落ち着くことになった。ボウリングは3年生のムライズムと負けず嫌いを久々に見たし、何より菜月先輩と圭斗先輩のコンビネーションが素晴らしく眼福だった。
それからボウリング会場近くの鍋屋へやってきたのだ。確かに入り口にはガチャガチャが何台かあったような気がする。律の奴、いつの間にか回してやがったのか。どんなラインナップなんだろうか。後で見てみるか。