「うーす、来たぞ」
短いインターホンの後に、ドンドンとドアを叩く音がする。高崎先輩だ。10秒待たすと怒られる。はーいと返事をしてドアを開ければ、いい匂いが漂って来る。
バイト上がりらしい高崎先輩の手には、バイト先で焼いてすぐ持ってきたピザがある。社割で安く買えるそれがちょっとしたつまみになることは多々ある。
そして俺の方も準備は整いつつある。台所にはバットの上に敷き詰められた餃子、部屋には卓上コンロにフライパン。今日、ここでこれから行われるのはちょっとした宴だ。
「先輩お疲れさまです」
「ビール買ってきたぞ。すぐ飲まねえ分冷やしといていいか」
「突っ込んじゃってください。こっちもあと焼くだけなんで」
「あと、ついでだから焼いて来た。ちょっとつまもうぜ」
「俺ピザ食ったらすぐ腹いっぱいになるんすよね」
「お前食わなさすぎだろ」
今日は山口先輩とつばめ先輩と買い物に行くことになっている。明日からはテスト期間だし、ステージ前最後の日曜日ということでじっくりと準備が出来る最後の機会。
「おはようございます!」
「ゲンゴローおはよ〜」
「さて、今日のスケジュール確認するよ」
つばめ先輩が今日の予定を読み上げてくれる。これからどこへ行って何をして、というタイムテーブル。山口先輩もそれに頷きながら、そうだね〜と一緒に予定を確認。
朝霞先輩はやっぱり出て来れないみたいだ。こないだのリハ日に熱中症で倒れて、週末は丸々休養に充てているとのこと。山口先輩もつばめ先輩も朝霞先輩ならどうするかって考えながら今日の行動を計画している。