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【SSS】正座のお化けちゃん

 えーと、触れていいのかいけないのか。学祭の準備でサークル室に入ったら、イスの上でお化けが正座してた。正確に言うとお化けっぽい顔を描いた白い布を被った誰かが正座している。
 おはようございますと部屋に入ったときの挨拶で顔が少しこっちを向いたような気がするけど、挨拶が返って来るわけでもなくただただイスの上で微動だにせずそこにあるのだ。
 そのお化けは何となく体積が小さめ。俺と同じかもっと小さいくらい。だから3年生の先輩とL先輩ではなさそうだ。そもそも、どうしてお化けなんだろう。ああ、そっか。ハロウィン。

「え、えーと……トリックオアトリート?」


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【SSS】その誰か一人になれたら

公式学年+2年

++++

 昼も夜もないスタジオは、大学祭の準備のためにフル回転していた。2年生から4年生がブースの準備をしていたり、大学祭の間もひっそりと行われるゼミのラジオの準備にも奔走。授業で制作した映像作品の上映会の準備っていうのもある。
 原付や車といった足のある人がコンビニまでひとっ走りして食料調達をしてきてくれると、作業で死んでいるみんなの顔がわあっと生気を取り戻す。今回の食料担当は4年生。あっ、きっとハンパない量だ。

「みんなー、ご飯だよー!」
「待ってました!」


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【SSS】帰りたい群衆の叫び

「おーい! カレーの練習するぞー!」
「うわ、出た」
「何が「出た」なんだよ、練習しないと味が安定しないだろ!?」

 ゼミの有志で大学祭にカレーの店を出すことになってしまった。そこまではいい。前日と当日に少し拘束されるくらいだと思っていたからだ。それがどうした。言い出しっぺの高井がいやに張り切っている。
 巻き込まれる傾向にあるのはオレと石川、そして美奈。見事にこの部屋を溜まり場にしている面々だ。他のゼミ生からは当然不思議な目で見られたが、高井が悪いと言えば大体納得されたのが高井圭希という男の日頃の行いだろう。


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【SSS】内心、嵐が吹き荒れる

「いっちーせんぱーい、来ましたー」
「お邪魔します」

 今日は無制限飲みを開こうとLの部屋に集合。いつもなら幹事は高ピーだけど、今日は俺が幹事としてこの会を仕切っている。無制限飲みは突発的に行われる宅飲みの総称だけど、誕生会の側面もある。何を隠そう、今日は高ピーの誕生日。
 先に別件で買い物をしていたらしい果林とタカシに買い忘れていた物を頼んだり、俺はと言えばコンロがひとつしかないLの部屋での料理に奮闘。電子レンジをフル活用するよね。Lは酒と餃子の準備に忙しくしている。


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【SSS】ABステップ

「1回だけしか着ないのは勿体ないので普段からも着れるのがいいかなと」
「ですよねー。まあでもタカちゃん線細いし女物でも多分イケるよ」
「そうですかね」

 今日は果林先輩と買い物に出ている。その買い物というのが、ひょんなことから出ることになってしまった大学祭の女装ミスコンに必要な物を揃えるという……何とも言えない買い物で。
 女装と言うだけあって、やっぱりある程度はそれらしく見えるようにはしなくてはいけない。ただ、コスプレ用のあからさまな服や一度しか着れないような服にお金を使うのも勿体ないなといつもの病が発症していて。
 果林先輩は俺の線の細さを理由に何でもイケるとは言うけれど、俺ってそんなに細かったっけと首を傾げて。伊東先輩だったらまあ、確かに線は細いし女物の服でも普通に着れそうだけど。俺はさすがに、とまだ思っていたいワケで。


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