「おー、菜月ー」
「おー、亮介ー」
生きてやがったかしぶとい奴め、と再会の挨拶もそこそこに本題に向けて動き出す。なんてったって寒い。ここのところ異様に寒かったし、今日も例に漏れず寒い。でもって夜だから余計に冷える。早く行くところに行ってぬくぬくしたい。
目鼻立ちのはっきりした痩せ型で(――と言っても圭斗ほどひょろくはない)、高崎と同じ銘柄(色がちょっと違う)の輸入煙草を手にうちを迎えたのは橘亮介。今は西の都・西京のお隣で古都・青丹エリアの大学に通っている。専攻は確か史学系だったかな? 歴史とか、そんな。
「ヤスは?」
「遅れるってー。何か風やら雪やらで電車アレだと」
「あー、あっちの方はなー」
「ま、先行ってやってましょうや」
「年の瀬の忙しい時期にお邪魔して申し訳ございません。こちら、つまらない物ですがお世話になりますお礼と年末のご挨拶を兼ねてお持ちしました。どうぞ皆さまでお召し上がりください」
「あらー、こーたクンいつもご丁寧にどうもー。どうぞ上がってー」
「お邪魔します」
こーたがちょっとした荷物を持ってうちにやってきた。本人曰く「親年代の女性と仲良くなるのは得意」とのことらしいけど、うちの母さんもこーたには甘い。どんなにこーたが人として出来ているように見えても所詮ただのウザドルだ。