「おはようございまーす」
「まーす」
「おっ。かんな、あやめ、おはよう」
「越谷さんおはようございまーす」
「まーす」
今日は日曜で、バイトの日だ。俺のバイトはとあるオフィスでの映像制作業務だ。どんな映像を作っているのかと言うと、結婚式場で流される映像だ。よくある新郎新婦の出会いからこれまでの歩みだとか、再現ドラマだとか。ああいった類の映像と言えばわかりやすいだろうか。
今年度になって、ウチのオフィスにも2人の学生アルバイトが入って来た。それが青浪敬愛大学に入学した諏訪かんな・あやめ姉妹。髪留めの色が違うくらいで、他は見た目に区別することが難しい一卵性双生児だ。
アイツはこの人に敢えて言わないようにしてるんだと思う。だけど、長く一緒にいればわかることはあるもので、どうやら伊東はここ最近イライラしていると言うか、ピリピリしているのを宮林サンにはすっかり見破られていた。
今年はワールドカップがあるからテンションがちょっと違うにしても、サッカーに関わる時のようなノリの違いではない。だけど、それに触れるべきか否かの結論は出ない。俺の元を尋ねてきた彼女はそう言う。
「――というワケなんですよ」
「なるほどな。で、アンタはどうしたい」