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【SSS】生み出すジュール

「あ、直」
「やあ。Lも買い物?」
「ああ。会議中に飲むお茶が欲しいなと思って」

 駅構内のコンビニで買い物中、偶然直と遭遇。行き先が同じということもあって、自然と合流する形になっていた。今日はこれから定例会がある。特に何か急ぎの議題があるワケではないけど、喋る立場にあるから飲み物は用意しておきたい。
 定例会は前回代替わりして、今の2年生の代の初回を迎える。議長が俺、委員長が直、そして副委員長がテルと元々いた2年生3人が大方の予想通りの役職に就いた。予想外だったことがあるとすれば、この代替わりのタイミングで青敬のハマちゃんが定例会に加入したことだ。
 俺は緑茶のペットボトルを手に、直がドリンクを選ぶのを待つ。手にしたのは、乳酸菌がいくらか配合された物。体を守るとかそんなアレだ。会計をしてさっさと行こう。そんな感じでレジの前に行くと、そこには罠が配置されていた。


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【SSS】Trace with fingers

「うう……」

 火曜昼はいつものように昼放送のオンエアがある。俺は至って普段通りに機材を繋げたりしているのだけど、菜月先輩は通路の隅っこに体育座りでうずくまっていらっしゃる。夏でもないのに風邪ということは考えにくいし、どうしたのだろうか。

「菜月先輩、顔色があまりよろしくないようですが」
「寝不足なんだ」
「ソリティアで徹夜でもされていたのですか?」
「いや、ついうっかり動画をな。見てたら止まらなくなってしまって」
「お気持ちはよぉーくわかります。俺もそんなことが多々あります」


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【SSS】その棺桶の名は社会

「おーす朝霞」
「ああ、鳴尾浜。よう」

 部活の現役中はこうやって授業前に声をかけてもステージのことばっかりばっかり考えてて上の空だったけど、部活を引退してからの朝霞はお前誰だという感じだ。雰囲気からしてちょっと違うような気がする。
 さっそく隣の席に陣取って、他愛もないことを話す。だんだん寒くなって来たとか、布団から出るのがしんどいとか。朝霞は寒いのが嫌いなようで、もうこたつから出られないらしい。トレードマークのカーディガンは、結ぶのではなくきちんと羽織っている。


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【SSS】いいものまだまだノンストップ

「おい伊東、今世紀最後の天才たるこのオレ様が来てやったぞ」
「あ、おこしやすー」
「何故似非方言を使った。まあいい。上がるぞ」
「どうぞー、みんなも来てるから」

 部屋の中に進んでいくと、伊東の他に宮ちゃん、浅浦、高崎、それから川崎が勢揃いしていた。今日は星港高校の集い的なものが伊東宅で行われる。集いとは言うが、飲み会を都合良く言い換えた言葉だ。
 台所では伊東が忙しなく料理の準備などをしていて、それを配膳するのは最早嫁と言っても過言ではない宮ちゃんだ。机の上のセッティングは高崎が慣れた様子だ。川崎は相変わらず喧しいし、浅浦は静かだ。何ら変わりない。


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【SSS】ネットワークを封鎖せよ!

 とんでもないモンを見ちまったなと思う。いや、俺もバッチリ見られた側には違いなかったんだが、一瞬で「互いに見なかったことにしよう」という空気が漂い、目と目でそれを確認し合った。
 駅前の百貨店と併設しているショッピングビルの最上階はレストランフロアになっていて、今日はそこにある自然食ビュッフェに来ていた。俺は菜月と来ていたが、目の前には見慣れたポニーテールとツレがいる。
 俺と目で意志疎通を計ったのはそのツレの方だ。これは互いに都合の悪い現場というヤツで、ここで見たことを俺は誰にも言わない代わりにてめェも絶対に漏らしてくれるな、確認したのはそんな暗黙の了解だ。


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