「ちょっと君、起きて。君!」
「う〜ん……」
「君、起きた?」
「えっ…?」
辺りを見渡せば、電気が煌々とついていたはずの情報知能センターのQ教室が真っ暗になっていて、俺は警備員と思しき中年男性に懐中電灯で照らされていた。一緒にいたはずのヒロの姿はなく、俺は独り爆睡を決め込んでいたらしい。ヒロの野郎、次会ったらぶっ飛ばしてやる。
「今日はこれから施設の電気設備の点検が入るから。ここは閉鎖されるんだよ。だから目が冴えたら出来るだけ早く出てね」
「あ、はい、すみません」
「3、2、1……終わりー! 誓約書の効力は切れました!」
「はい、確かに。12月25日午前8時。終了です」
「ひゃっほーう! 書くぞー!」
クリスマスイブのデートを終え、2人で迎えた25日の朝。朝も早くから慧梨夏はパソコンデスクの前に陣取って正座で時計を確認している。デジタル時計の秒針が1秒1秒単調に刻んでいるのを穴が開くんじゃないかってくらいに見つめていて。
迎えた午前8時、慧梨夏は机の上に置いた1枚の白い紙をビリビリと引き裂きいろいろなアプリケーションを立ち上げた。23日から封印していた趣味の活動を再開するためだ。どうして趣味を封印していたのかと言うと、ビリビリにした紙が関係している。