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【SSS】地道に数打つリクルート

 15枚ほど積み上げられてた木製パレットの上に、胡座で眉間にシワを寄せる塩見さんの姿があった。こんな時の塩見さんは、きっと何かを考えているんだと思う。この状態のオミに下手に声を掛けると怖いぞ、とは宮本主任が教えてくれた。
 会社では年末年始に向けた出荷が一段落して、それこそ大掃除が出来るまで静まりかえっていた。それぞれ事務所や食堂、作業室なんかの持ち場を掃除していて、俺は主任と一緒に現場の掃除をしようとモップを手に倉庫の端を目指して歩いているところだったんだ。

「千景!」

 突然上から声が降ってきてビックリした。足を止めて振り向くと、塩見さんが器用にパレットの山から駆け下りてくる。


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【SSS】休日のマルチタスク

 12月はピザ屋の超繁忙期で、俺も例に漏れずバイトに入れる日はずーっとバイト漬けだった。いくら俺が寒さに弱かろうと原付で外を走り回らなければならず、車は長谷川とかいうクソが決まって先に取ってるか強奪されるかで使えずじまい。今日はクリスマスを乗り越え、やっとこさ丸1日休みだ。
 休みになってやることはと言えば、こたつに入ってバニラアイスを食うことだ。そのバニラアイスにカルーアをかけてもいいが、それをやるのは外に出る用事がない時だけだ。そしてコムギハイツに住んでる連中も年末で大体帰省してるからやりたい放題。今日は思いっきり羽を伸ばす。

「……って、何でお前らがいるんだ」
「高崎のこたつ布団、さすがこだわってるだけあっていい匂いするよねえ」
「なあ高崎、ミカンとかねーのミカン」
「越野、ミカンはないがジャガイモならあるぞ」
「ジャガイモは煮るとかしねーと食えないじゃんか」


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【SSS】戦線参加のエントリー

「えーでは、今年の情報センターも仕事納めっつーことで、お疲れさんでした」

 授業は先週のうちに終わっていたが、情報センターは今週も開放されていた。しかし、年末年始には当然閉鎖される施設であって、スタッフもそれぞれ実家へと散っていく。
 春山さんの閉めの挨拶を清掃道具を持ちながら聞くオレたちだ。センターにも清掃業者は入るが大掃除までは業務のうちに入っていないらしい。センターの自習室、そして業者の入らない事務所の大掃除という名目で今日は全員が集合していた。

「さて、何か言い残したことはあったかな」
「屯屯おかきホタテ味」
「リンてめえ、安定の蛮族だな」
「爆買いは安定の行事なんですから、リクエストを送るくらいは自由かと」
「えー! そしたら俺もバターサンドを〜…!」
「自分はバターケーキの方でオナシャース」
「はいはい。川北はサンドで冴はケーキだな。はい他」


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【SSS】another opens

「ちょっと君、起きて。君!」
「う〜ん……」
「君、起きた?」
「えっ…?」

 辺りを見渡せば、電気が煌々とついていたはずの情報知能センターのQ教室が真っ暗になっていて、俺は警備員と思しき中年男性に懐中電灯で照らされていた。一緒にいたはずのヒロの姿はなく、俺は独り爆睡を決め込んでいたらしい。ヒロの野郎、次会ったらぶっ飛ばしてやる。

「今日はこれから施設の電気設備の点検が入るから。ここは閉鎖されるんだよ。だから目が冴えたら出来るだけ早く出てね」
「あ、はい、すみません」


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【SSS】余韻が尾を引いたまま

「3、2、1……終わりー! 誓約書の効力は切れました!」
「はい、確かに。12月25日午前8時。終了です」
「ひゃっほーう! 書くぞー!」

 クリスマスイブのデートを終え、2人で迎えた25日の朝。朝も早くから慧梨夏はパソコンデスクの前に陣取って正座で時計を確認している。デジタル時計の秒針が1秒1秒単調に刻んでいるのを穴が開くんじゃないかってくらいに見つめていて。
 迎えた午前8時、慧梨夏は机の上に置いた1枚の白い紙をビリビリと引き裂きいろいろなアプリケーションを立ち上げた。23日から封印していた趣味の活動を再開するためだ。どうして趣味を封印していたのかと言うと、ビリビリにした紙が関係している。


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