ここ最近、いやにバタバタしている。そんなバタバタの末に辿り着く最後の場所が、いつもの“玄”だ。忘れ物のないようしっかりと支度をして途中で宇部と落ち合い、一緒に暖簾をくぐる。すると、いつものように山口がいらっしゃいませ〜と俺たちを出迎えるのだ。
いつものと言う割に最近では割とご無沙汰で、店には来るけど山口がいないパターンも往々にしてある。山口にもとんでもなく久々に会うような感じがする。現に、今年になってから初めて会ったんじゃないかとすら思う。ちょっと記憶が定かじゃないのが申し訳ないんだけど。
「2人とも、生と5種盛りだよね」
「そうだな」
「ええ。それでお願いするわ」
「少々お待ちください」
……さて、身動きは取れないし腕は痺れているしでオレはどうしたものか。テレビからは彼是3周目となった映画が流れ続けている。もうしばらくすれば、日が昇る気配も見え始めるだろうか。しかし、日が昇ってもオレは動きを封じられたままであれば、大分しんどさがある。
身動きが取れないものの、救いは座椅子の座り心地がいいことだろう。オレを抱き枕かクッション代わりにして爆睡しているのは、昨日美奈と行ったバーで出会い知り合った朝霞という男だ。店で意気投合したまでは良かったが、朝霞は喋りと酒がどんどん進み、泥酔したのだ。
昨日相席をした4人中3人が西海市在住で、朝霞だけは帰る方向が逆だった。仕方がないのでアパートまで送りついでに部屋で少し話していたらこうだ。あれよあれよと映画を見る流れになりそれについてハツラツと喋っていたかと思えば、急に糸が切れたように落ちた。
「……しかし、どうしたものか」