「浅浦ー、うどん打ったんだ」
「ホント、よくやるよな」
うどんの麺の入ったビニール袋を持って伊東がうちにやって来た。コイツは時々こういうことをするんだ。宮林サンの世話をしている間に家事に目覚めたらしく、気付けば台所を要塞のようにしていた。1人暮らしを始めた当初は家電も学生の1人暮らしというグレードだったように思うけど、今ではかなり高級になったと思う。
まず、どこのメーカーのものかわからない1万円もしないような電子レンジが、大手メーカーの多機能オーブンレンジに変わっていた。値段も5万から6万、いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。レンジだけではなく、その他にも台所用品にはこだわり始めたようだ。
その多機能オーブンレンジでパンを焼いたりケーキを焼いたり、本当にいろいろなことをしている。うどんはオーブンレンジを使わないけれど、小麦粉を使うものという意味でごくたまにやるようになっていたようだ。俺はスーパーで簡単に買える物を、わざわざ作るという発想にはなかなかならないけれど。