スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。


【SSS】レッド・ブロック

「リン……さっきから、電話が……」
「こんな時間にひっきりなしにかけてきやがって。迷惑と言う他にあるか」

 時刻は午前5時半、私はリンの車の助手席に座り、高速道路の上にいる。徹を含めた3人でゼミ室泊をしていたのだけど、ふと目覚めるとリンの姿がなくて。机の上からキーボード……パソコンのではなく、鍵盤楽器の方のキーボードが無くなっていたことから、私はリンの書置きを頼りに海に出た。
 徐々に昇る太陽が夜を追いやっていたちょうどその頃、私は海岸でキーボードを弾くリンを見つけ、そこで彼と少し話していた。話していた内容はそれと言って特別なことではなかった。彼の基準では徹夜続きの状態では日付が繰り上がらないのだそうだけど、朝日を浴びたことで新しい1日を始めることが出来たとか、そんなようなこと。
 それから、学生のノリなのかもしれない。車を西に走らせて、西京エリアへ向かうことにした。西京までは高速道路を使えば2時間もあれば余裕で着く。法定速度よりいくらか速いリンの運転では、1時間半を切ると思う。現地で何をしたいかをスマートフォンで調べていたときのことだった。


続きを読む

【SSS】summer plan and leader's joke

「対策委員からの連絡は何かあるかな?」
「はい。えーと、夏合宿の参加申込書が出来ました。例年の感じで言えば、MMPの人には出来れば参加して欲しいです」

 初心者講習会が終わってもうすぐに夏合宿に向けて動き出していた。早いところ参加者を割り出して班を編成して、番組を作って〜という流れに持って行かなくてはならないのだ。講師は誰にしよう問題はもう少し先回しでも大丈夫。講師候補は現在選定中! という体だ。
 対策委員の会議で刷っていた合宿の開催要項兼参加申込書を1人につき1部配布する。開催要項の下に点線が振ってあって、そこで切り取るというアナログな仕組みだ。アンケートアプリでも使えば良かったんだろうけど、それはそれでまた面倒な点があったりするし。


続きを読む

【SSS】本当は、本当は

「越谷さん! 飲みましょう!」

 朝霞が酒瓶を抱えてうちに殴り込んで来た。互いの部屋を行き来すること自体は別にさほど珍しくないし、多分今回もその一環だろう。ただ、今の時刻はちょうど0時を跨いだ頃で、飲みましょうと言っている朝霞本人には既にある程度酒が入っているようだった。恐らくはここが2軒目。

「どうしたんだ朝霞、急に」
「班で飲んでたんですよ。山口の野郎が誕生日を祝えってウルサいし、源の歓迎会もやろうってことでさっきまで玄でやってて。大体、お前の誕生日がどーしたってんだ。俺が知るかっつーの」
「まあまあ朝霞。そんなことを言いつつも、何だかんだやってやったんだろ?」
「断っ……じて! アイツのためではなくて、班の決起集会です」


続きを読む

【SSS】世界を組み上げる歯車

 朝霞班にゲンゴローが加入して少し。せっかく来てくれた1年生だし仲良くなりたいけど、まだもう少し時間がかかりそうかな、という感じがしていた。それというのも、丸の池の枠をもらえたことで朝霞クンが早々にPのモードに入りそうで、それがゲンゴローの緊張の一番の原因だから。
 そこで、俺とつばちゃんの誕生会を兼ねたゲンゴローの歓迎会が開かれることになった。会場はもちろん俺がバイトしているお店。でもその前に今日の部活をしっかりとやりましょうということで、俺たちがやっているのは朝霞クンの背中の方にそびえ立つ例の山を崩すこと。

「いろいろ出てきたでしょでしょ〜」
「マジでいつから積みっぱだったんだこれ」
「山口先輩、これって何かの設定資料とかですか? すごく凝ってますけど」
「あ〜、朝霞クンの字だし1年のときのかな?」


続きを読む

【SSS】夏カレー40分クッキング

「岡島水鈴の、40分クッキングー!」
「わー」
「ですー」

 水鈴のタイトルコールに、拍手をするのは諏訪姉妹。エプロン姿の水鈴が立つのは、俺の部屋の台所だ。今日はこれから何が行われるのかというと、夏だからカレーを食べようという行事だそうだ。呼ばれているのは俺と裕貴、それから諏訪姉妹で水鈴を含めた5人での会になる。
 なんでも世間では夏至カレーなるものがじわじわと、本当に少しずつではあるけど広がりを見せているらしい。今年の夏至は昨日だったらしいんだけど、水鈴は向島で行われた夏至カレーイベントの司会の仕事をしていたそうだ。その流れで今日のカレー、と。


続きを読む
前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2019年06月 >>
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30