「実際単位互換制度ってどうだった?」
「結構良かったよ。朝霞も興味あるの?」
「ちょっとな。あっこれ玄米ご飯うまい」
久々に長野と会っているのは自然食レストラン。ここを指定したのは長野だ。緑ヶ丘でもらったフリーペーパーに載ってて気になったそうだ。この場所で少しばかり初夢占いのお礼も兼ねて互いの近況を。
長野の話を聞くに、エリアの単位互換制度を利用して緑ヶ丘大学の授業(例に漏れず呪術系の内容)を1つ受けていたらしい。学内で高崎と会ったり、なかなか面白かったと。
「やっぱり受けたい授業を受けるのが一番だよ」
「緑ヶ丘の授業はそんなに面白かったのか」
「羽椛先生はその筋の権威の人なんだ。離島でやる2週間のフィールドワークにも誘われたけど、体がついてこなさそうだったから泣く泣く辞退したよ」
「その筋というのがどの筋かは聞かないけど、単位互換制度が悪くない物だとはわかった」
半期振りに大学に復帰して、授業を受けるモチベーションは緑ヶ丘への遠征だったと長野は言う。俺の周りにはそういうのを使ってる奴もそうそういないし、制度もよくわからないけどどこか遠いものだった。
だけど、気紛れで覗いていた履修可能講義一覧表の中に、気になる授業があったのも事実。受けたい授業が受けられるのなら、試す価値はある。申し込みまでの期日はそう遠くない。
「朝霞も何か気になってたの」
「俺も緑ヶ丘なんだけど、イベントプロデュースって授業。ウチの学部っつーか星ヶ丘にはそういうのないから」
「あー朝霞っぽい。緑ヶ丘はやっぱいろんな授業あるね」
「ホントだな。来年受けに行ってみるかな」
「緑ヶ丘を歩くときはガイドつけた方がいいよ。俺も高崎と出会えなかったらいろいろ損してたからね」
「じゃあ、カズに案内してもらおう」
まだ申し込みをしてもいない単位互換制度の夢はどんどん広がっていく。長野の成功談によってその制度が輝きを増して、まだ見ぬフィールドへの冒険心が溢れる。
緑ヶ丘の歩き方だとか、大学の雰囲気を聞いていくとさらにだ。4年になると就活とかもあるだろうけど、何とかいけたらと思う。もっと早くちゃんと考えときゃ――って、部活があるからムリだった。
「朝霞のそれはどこ学部の授業?」
「えっと、社会だったかな」
「じゃあ高崎が知ってるかもね」
「高崎って社会なのか」
「俺の受けてたのも社会だったけど、物凄い拒否反応されてちょっとヘコんだなー」
「お前の専攻は内容が特殊だからだろ。でもまあ、今度高崎に聞いてみるかー」
民俗学のどこが特殊なんだーと棒読みの抗議と一緒に空の茶碗をもらえば、喜んで次の飯をよそわせていただきます、と立ち上がる。食欲とノリを見る限り、長野も元気そうで何より。
「はい長野、おかわり」
「ありがと」
「つーかお前結構食うな」
「緑ヶ丘ナイズされたみたい」
「は?」
「緑ヶ丘の日は高崎とご飯食べてたんだけど、基本量がちょっと多いんだよね。ムリそうだったら高崎にあげてたんだけどさ、気付いたら食べれるようになってたっぽい。入院前の元気だったときより肌艶も良くなったよ」
「マジか」
青敬よりご飯は美味しいよ、というのもプラス情報か。いや、青敬の味も知らないけど。星ヶ丘との比較点は、寒くなければいいというそれに尽きる。まあ、ラーメンを食うには寒いのもいいんだけど。
まだ緑ヶ丘に行けると決まったワケでもないのに、どこか浮き足立っている。先駆者の話はやはり大きい。あと、肌艶が良くなるという食事事情も気になったりする。
「後期の授業でも申し込みは3月下旬までだから、忘れないようにね」
「それな」
end.
++++
朝霞P、方向音痴にガイドさせたらアカンやよ! 単位互換制度のあれこれ、ここに着地。高崎は(専攻的な意味で)長野っちとの相性悪いのによう頑張ったなあw
緑ヶ丘のフリーペーパーと言ったらやっぱり出版部のあれか、あれなのか。ちょっとお安くなっちゃったりするクーポンがついてたりする出版部の部誌なのか!
入院前より肌艶が良くなったと語る長野っちが入院前にどんな食事をしていたのかはわからないけど、そこは高崎に引き摺られていた可能性も無きにしも非ず。緑ヶ丘には定食……まあ、あるだろう!