「おい、朝霞」
「うーん……」
「朝霞起きろ」
「んー……」
せっかく人が気持ちよく寝てるのに、邪魔すんな。あと5分、あと5分……
「――って、えっ」
「やっと起きたか」
慌ててメガネをかけると目の前には先輩がいて、今までゆさゆさと俺の体をゆすっていたのも間違いなくこの人だ。周りを見渡すまでもなくここは俺の部屋ではなく、着ている服も自分の物ではない。
「お、おはようございますっ!」
「別にそこまで改まらなくてもいいけどな。気分はどうだ、水でも飲むか」
「スイマセン」
飛び起きて正座をしたまま越谷さんが入れてくれた水を飲み、状況を整理する。えっと、昨日は確かバイト終わりに越谷さんに捕まって一緒に飲んでて、結構気分が良くなったな。
「――で、例によってぐだぐだになって現在に至る」
「スイマセン」
越谷さん、越谷雄平さんは放送部のはみ出し者が追いやられる流刑地班、その前の班長だった人だ。当然、今の班長である俺との関わりは部内でもかなり深い方だ。
山口や戸田も越谷さんの世話にはなってるけど、自宅生で生活リズムも一定のこの2人よりは一人暮らしでバイトもまばらな俺の方が捕まりやすいとかで、昔からよく飯を食ったり酒を飲んだりしている。
ただ、俺はお世辞にもそこまで酒は強くない。酒も飲みの雰囲気も好きではある。今ではちょっとマシになったけど、昔は調子に乗って潰れる度に越谷さんの部屋に担ぎ込まれていた。
「お前そんなんでインターフェイスでちゃんとやれてんのかよ」
「インターフェイスではある程度抑えてます」
「ホントかな〜?」
「そりゃちょっとは気分が良くなることもありますけど」
「朝霞、お前自分が酔ったらどんだけめんどくさいか自覚した方がいいぞ」
「そんなにめんどいですか」
越谷さんに、自分が酔うとどうなるのかを聞くとこれは確かにめんどくさい。気分が良くなると手元に酒のストックを置いてステージ講釈を始める絡み酒タイプらしい。
そんなモードでもない時に延々と酒を煽りながらステージ講釈なんかされようモンなら。社会人になったら仕事とはー、とかって語りそうなタイプだよなと越谷さんが笑う。
「思ったよりもめんどくさいみたいですね、俺」
「まあ、めんどくさいだけじゃなくてかわいい面もあるにはあるぞ」
「えっ」
「昨日は、俺が3年でダブってればいろんなステージが出来たのにーって泣きついたり。その前は、山口と戸田の可能性について延々と語った上で俺はどうしてこんなんなんだーって泣いてたり」
「ちょっ、えっ、越谷さん俺そんなことしてるんですか!?」
「……つーか、記憶なくなるまで飲むのはほどほどにしといた方がいいぞ」
それでなくてもお前は場の雰囲気に合わせて自分の処理能力以上にガンガン飲んじまうタイプなんだから。そう改めて越谷さんが忠告を入れてくれたところで、そろそろ着替えようと自分の服を探す。
「越谷さん、ところで俺の服は」
「酒こぼして全身べったべたになったから洗った」
「スイマセン! 本っ当にスイマセン!」
「いや、土下座まではしなくていいし。さすがにカーディガンやシャツはともかく股間にシミつけたまま外は歩けねーだろ」
「俺、どんな酒のこぼし方したんですか……」
酒のこぼし方を再現してもらうと、それはまた土下座モノ。わかっちゃいるけどやめられないのはどうしたものか。インターフェイスではそれなりに抑えてるのに、越谷さんと飲むときはどうも。
「とにかく、お前は自分の弱さを自覚して、状況に応じた加減を覚えろ」
「はい、スイマセン」
「でも俺には遠慮すんな。流刑地の班長っつー立場だといろいろ溜まるだろうし。そもそも、俺がお前のことを誘ってんだ」
「じゃあ、あと30分寝かせてもらっていいですか、頭痛いです」
「二日酔いかこの野郎」
end.
++++
こっしーさんと朝霞P。星ヶ丘の仲良し先輩後輩はここにも。こっしーさんと朝霞Pはよくご飯を食べたりあれこれしている模様。
朝霞Pはインターフェイスの3年生の中では多分4番目くらいに弱い。(※現在朝霞Pの下にはいち氏(男に絡む)、菜月さん(笑い上戸で泣き上戸)、三井サン(真っ赤になって倒れる))
洋平ちゃんとつばちゃんの可能性について語ってるとか、それってきっとある程度やれるんだということを語ってるんだろうから……朝霞Pこっしーさんに弱味握られましたねこれは