「ふーっ……よしっ」

 いっちー先輩の手が見えない。凄まじい速さで電卓を叩いている。それだけ速く電卓を叩こうものならアタシだったら絶対間違えるけど、何て言うか、“ワールド”だよね、いっちー先輩のワールド。

「あっ、次サークル費っていつでしたっけ!」
「来週の月曜だ」
「あ、よかったーって、じゃあどうしていっちー先輩は電卓バチバチやってるんですか? って言うかそもそも会計って育ちゃ――それは察しましたけど、何でこのタイミングで」
「でけェ声じゃ言えねえ事情だ」