「桜、まだかな」
「もう少しだと思います」

 向島大学は小高い場所にあるからか、星港市内よりは桜の開花も少し遅い。今日は新4年生の健康診断の日。俺は野暮用(サークルの新歓ポスターを作れとかいう律からのムチャ振り)で大学に来ていたけど、まさか菜月先輩にお会いできるとは。
 もう少ししたら、図書館から校門までを結ぶ坂道を桜の花が埋め尽くすだろう。桜並木の坂道は、それはもう言葉にできないくらいに美しい。菜月先輩も、春のこの場所がとてもお好きでいらっしゃるそうだ。