丸の池ステージまで3週間を切った。8月アタマの土日で行われる丸の池公園でのステージは、星ヶ丘大学放送部の一大イベント。特に俺たち3年生は現役で活動する最後の学年ということもあって、やることなすことに“最後の”と付く。最後の丸の池ステージを成功させるためには1日だって無駄に出来ない。
 今日も例によって朝霞クンは台本と睨み合っていた。現段階でもまあまあ完成された台本だけど、朝霞クンの作業に「完成」とか「脱稿」という言葉はない。直前まで、場合によっては本番中にだって見直しが入るほど。どうすればもっと良くなるか、閃いたアイディアを今からこの本に入れて生かすにはどうするべきかを考えている。
 俺は朝霞班のステージスターとして、そんな作業をただただ見守る。壇上に上がれば俺の独断で台本を無視してアドリブで回すこともあるけど、それでも基本は朝霞クンの上げてくれる台本なんだ。台本がないとステージは回らないし、朝霞Pがいないと俺はステージスターになり得ない。