「アインプロージット! スガ! 俺たちはオクトーバーフェストに行くべきだ!」
「カン、突然どうした…?」
「泰稚さん、今花栄でオクトーバーフェストやってるじゃないですか。昨日カンさんその前を通りがかったんですって。そしたらドイツの楽団の演奏ステージってのがやってたとかで」
「キーボードとアコーディオンがいたんだよ〜! もっと近くで見たいしかんぱーいってやりたいじゃねーかよー!」
「相変わらずわかりやすいなお前は」

 菅野班のブースに入ると、どうやらカンが俺を待っていたらしい。その手にはオクトーバーフェストのパンフレット。確かに花栄のど真ん中でやっているという話は聞いていたけどまさかそのお誘いが来るとは。と言うかカンの動機がまたわかりやすいと言うかあからさまと言うか。
 カンは一緒に街を歩いていても、ストリートバンドの演奏だとか野外イベントの音楽ステージにはほぼ100%足を止める。そこにどんな音があって、それがどんな音楽になっているのかということを日々吸収して自分の作る音に生かそうとしてるんだ。あとは単純に音楽のある空間が好きなんだ。
 俺とカンが組んでいるCONTINUEというバンドにしてもそうだし、部活でやっている菅野班のステージにしても音楽が軸になっている。そして今は丸の池ステージに向けて練習の日々だ。俺たちは他の班とは決定的にスタイルが違うから、ミーティングルームのブースで大人しくしていることはほとんどなく、どこかで音を鳴らしている。