「はー、お腹いっぱい。えっと、塩見さん、本当に兄さんのお店でいいんですか?」
「ああ。連れてってくれ。駅前だったか?」
「はい」

 ひょんなことから拓馬さん主催の焼肉大会に巻き込まれた俺は、どうせ巻き込まれたなら食ってやらぁと肉をしこたま食っていた。星港で買い物してたらいきなり拓馬さんに会って、この後暇なら肉食うぞって。昔から拓馬さんはこういう勢いのある人だったし、実際予定もなかったから付いて行ったけど。
 拓馬さんの職場は西海市内にある倉庫だ。スポーツ用品などを取り扱っているという。盆過ぎから10月いっぱいくらいまでは忙しさがどんどん増していくそうで、それに向けての景気づけのような感じで肉を食うぞ、と。同じ倉庫でバイトをしている大石と、拓馬さんの昔馴染みの向島の院生という、変わった4人で食らう肉だ。