「あ、さすがに秋学期1回目はちゃんと来たね」
「さすがに来ますよ、1回目は」

 秋学期1回目のゼミが始まった。社会学部3年のゼミは木曜4限に設定されている。安部ちゃんはお茶を淹れながら、やってきた学生に秋学期の初回だからとまんじゅうを配っている。ゼミがお茶会になるのは安部ゼミあるあるだ。
 出席が足りないタイプの問題児である俺は、14時40分から始まる4限にも寝坊で遅刻することが多々ある。安部ゼミのルールでは、45分以上の遅刻は0.5回の欠席にカウントされる。丸1回寝過ごすこともあるし、0.5欠の積み重ねで俺は出席がヤバくなっていた。

「ところで高崎君、君の夏のレポートだけど」
「ああ、どうでした?」
「君自身のレポートは相変わらず良く出来てて、この調子で頑張ってくれたらいいよね」
「そうすか」
「で、肝心の飯野君のレポートだね」
「あっ、大事なのはむしろそれっす。どうでした?」