「……ふう。秦野さん、どうでした?」
「うんうん、よかったよー」
「そうですかー」
「それじゃあ休憩しようかー」

 よかったよー、じゃないんだけどなあ。星港大学演劇部では、学祭公演と12月公演に向けた練習で忙しい。トレーニングに、読み合わせに、練習にと休みの間中ずっと準備してて、学祭の方はそろそろ詰めていかなきゃいけない頃合い。
 演出を担当している秦野先輩が練習を統括してるんだけど、私が「どうでした?」って改善点を聞いても「よかったよ」としか言ってくれないのが専らの悩み。私は自分のやってることが自分で見れないから聞いてるのに、何がどう良かったのかすらもわからないんだもん。