「せ〜り〜ちゃんっ。あれー? いないなあ。リン君、芹ちゃんいる?」
「センターの利用でしたら学生証を。そうでなければお帰り下さい」

 机の下でバツ印が作られている。それに従い、オレはその人にテンプレートの応対を。受付を屈むように覗き込んでいるこの人は、4年生の青山さんという人だ。春山さんに脅されて加入させられたブルースプリングというバンドのドラムで、春山さんとは同じゼミの友人でもある。悪友とか盟友と言う方が正しいかもしれん。
 この機械的な応対には理由がある。オレが受付を好かんということや春山さんが机の下でバツ印を作るのとは別に、オレ自身が青山さんを警戒しているというのが挙げられる。ブルースプリングの合わせなどで顔を合わせるにつれ、青山さんという人の変態的な性癖が明らかになってきたのだ。