螺旋状に突っ走って死にたいプロフィール
2014/4/26 Sat 19:16
10分構想(5回目)


話題:自作小説

「墓掘り人」

ひたすら地面を掘り続ける男がいた。ひたすらひたすらひたすら。掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘って。

奇特な一人がこう聞いた。「何で掘ってるの?」

男はこう答えた。
「墓を掘っている。」



男は毎日墓を掘っていた。雨の日も風の日も、ひたすらひたすらひたすら。
掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘って。

ある時、別の奇特な一人がこう聞いた。
「誰の墓を掘っているんだい?」

男は何も答えなかった。



男は毎日墓を掘っていた。誰のためかわからない墓を。

噂だけが空を飛ぶ。
やれ、あの男自身の墓だ、やれ、あの男の家族だ、恋人だ、やれ、いやいや、あの男は神様の墓を掘っているのだ。

その答えを誰も知ることはできなかった。


ある日、男は死んでいた。できあがりかけた墓の横で死んでいた。

誰かが言った。
「やはり男は自分の墓を掘っていたのだ。自分の死期を悟り、墓を掘っていたのだ」

他の誰かが言った。
「いや違う。男は志半ばで死んだのだ。彼は誰かの墓を掘っていたのだ」

また他の誰かが言った「いや男は神様…」

途中で殴られて言葉は消えた。


ある親切な一人が言った。
「どちらにしろこのままではかわいそうだ。彼の墓を作り、彼を埋葬しよう」


そして、男が掘った墓の横に、男の墓ができあがり、男はその墓の下で眠ることになった。


墓碑にはこう書いてあった。

「墓掘り人、自ら掘った墓の横で眠る」




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