益者三傑
[2017.6.18
15:33 Sun]
■ヴァン+レン春(妖精シリーズ05/完)
■
それは煌めく歌だった。天に輝く月を取り囲む、小さな星たち。その中の7つの星が天での居場所を探し、見つけようとする。7人の歌…音楽はまるでパレードをするがごとく天球の隅々まで響き渡った。
謎の依頼を完了した春歌は、ポストに入れた楽譜がすぐ消えたことに驚いた。まるで魔法のようで、無意識に「妖精さん…」と呟く。フードコートで出会い、それ以来になってしまった妖精のことを春歌は思い出す。
玄関先にいた春歌の指の先にぽつりと雫が当たる。季節は梅雨になっていた。
聖なる行進のような音楽を天に捧げたあと、ヴァンの記憶は元通りになっていた。
「え、これ、どういうことや…ワイ…何しとったん…?」
記憶を失くしたまま、6人とした会話も鮮明に思い出せる。正常な今、ヴァン自身振り返ってみるとおかしな言動を自覚した。
「ニンゲンに干渉して運命を変えたでしょ〜?掟に叛いた罰で記憶が消えてたの!」
「そうなん!?そりゃ…みんなに迷惑かけてしもうたな…」
「分かってると思うけど、結構大変だったんだから!これからは気を付けてよね」
「心配してくれてありがとうな、ナギ」
別に〜!!とそっぽを向くナギをヴァンがわしゃわしゃと撫でる。髪がくずれる!と言いながら手を振り払わないナギの目には涙が見えたとか見えなかったとか…。
ジューンブライド。神宮寺レンと七海春歌が結ばれるのは、梅雨の合間、晴天の日。白いタキシードに身を包んだレンが、鏡で身なりを念入りにチェックしている頃…。
春歌は、ちょっとしたドジで押して会場に入り、落ち着いて着替えようと椅子に荷物を置いた。息をひとつ吐いて、落ち着くために閉じた瞼を上げる。目線の先のテーブルには、小さなケーキボックスが乗っていた。
ケーキボックスを閉じてあるシールは、紺色の星の形。
「これって…!!」
急いで春歌が開けると、アイスが乗ったシンプルなミニパフェが2つ入っていた。メモや手紙は…ない。しかし、この寄り添うような2つのパフェを、結婚式場に届けてくれたことが、きっと春歌の曲への答えだろう。
「ハニー、開けてもいいかい?少し、会いたいな」
「はい、入ってください!実は、今来たばかりなんですが…是非…一緒にデザートを食べませんか?」
「ワイらから最後の『恋』の…月の蜜や。『愛』しあう2人を死が分かつ時まで…お幸せにな!」
epilogue チャペル
恋する人と食べるデザートは格別甘く感じるだろう?
それはね、「夜の楽園」からやってきた妖精が、「月の蜜」をかけてくれるからなんだってーーーー。
これはパパが、キミのママに聞いた話。さぁ、もう遅いからパパも眠るよ。
まだ眠くない?
そうだなぁ、窓の外には何が見えるかな?そうだね、お月様が見守ってくれてるね。
でもね、よく目を凝らしてごらん。
空には星もたくさん光輝いているんだよ。
お月様もお空で寂しくないように、オレ…パパたちが見上げる夜空が寂しくないように…。
いつかキミやパパにも、星の妖精が見えるといいね。
そんな日を夢見て。おやすみ、リトルプリンセス。
end.
ーーーーーーーー
無事に完結です!
ちなみに診断にはすごく助けられていてネタバレだったので、最後に全文を載せます。お題、使わせて頂きました、ありがとうございます。
↓参考↓
ヴァンがかけられたのは、少しずつ記憶を失っていく呪いです。
星の光で呪いが解けます。
ヴァンが最も愛する人だけが呪いを解くことが出来ますが、その人は呪いのことを知りません。
「呪いをかけられた」
shindanmaker.com
170618
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