prof:bkm:
30代/二次元/メンタル/お洒落
通夜の途中の話
18:42 2015/6/19
話題:最近、泣いた??

お通夜には一時間半かけて向かいました。葬儀場へ着き同期の女の子と「この辺に座りましょうか」と相談しあって後ろの方に着席すると、ちょうどわたしの左側が空席となりました。しばらくの間黙って利用者の方の遺影を眺めていました。

わたしは投薬試験に二回落ちていて、実習を含めると相当な回数その方の投薬を担当しています。薬は飲みたくないと何度も暴れられて、その度に「飲まないと元気になりませんよ」と声をかけました。酷い時には男性の加瀬主任が暴れるその方の体を押さえ込んで、その間に何とか栄養補助剤と薬を飲ませました。毎回心身共に疲れ、髪は振り乱れてボサボサ、体は汗でぐっしょりという状態でした。

また亡くなった当日の朝にはわたしがその方の朝食に付き添って「食べないと元気にならないですよ」と声掛けをしました。ポケットに入れていた子機が鳴り、同期の女の子から「ハウさん、○○さん食事どのくらい食べました?」と聞かれ「ご飯はまた殆ど残してます。お味噌汁は半分くらい飲んであります」と、ちょっとため息混じりの声で答えて。どうして食べてくれないんだろうという、自分の思い通りにならない歯がゆさが確かにあったんですね。
「もう食べたくないって言ってるじゃん。はやく片付けてよ」
それがわたしが聞いた最後の言葉となりました。

まだ式が始まってもいないのに涙が込み上げ、鼻の奥がつんと痛くなってきました。頬の水滴を拭うと周囲に泣いているのがバレると思い、ただただ前を向いていました。すると空席だった左隣に誰か喪服の女性が座りました。片岡さんでした。
「今日家帰ってから少しは寝たー?」
やけに明るい、しかしいつも通りの声でした。
「いえ……寝てないです」
「よねー。わたしも夜勤明け寝なーい。若い頃は夜勤明けが超キツくて、スーパーの駐車場に車停めて仮眠とってたんだけど。年とったら大丈夫になった」
「じゃあ今の方が楽なんですね」
と答えながらも、片岡さんがどうして今そんな話をするのかわけが分からず困惑しました。場内はとても談笑するような雰囲気ではなく、続々と集まってくる喪服の人々がご家族の方に「この度は……」と頭を下げて回っていたからです。

「○○さんね、理事長からもすごく可愛がられてたんだよ」
施設に勤めて長い片岡さんが、正面を向いたまま利用者の方の思い出をいくつか教えてくださいました。話し声は段々と湿り気を帯び、ついには鼻をすする音が混ざってきました。やがてどちらともなく会話を終え、二人で静かに泣きました。わたしは会場を出るまでたったの一度も片岡さんの顔を見ませんでした。

拍手してくれた方々どうもありがとね。

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