「あなた、シャツにアイロンかけて」



「あ、そうか。明日は就職試験か」



高三の長男、明日が本番



「クリーニング出したんじゃなかったっけ?」



「それはスラックスよ」



「シャツにアイロンなんて長いことかけてないけどねぇ。女房こないだアイロンかけてなかった?」



「ご指名なの。よろしく」



息子の服装検査の前にスラックスの裾アイロンかけで妻以上の信頼を得ているらしい



「了解」



あと少しで卒業



ギリギリになって通学の靴の底がベラリと剥がれかかっているのが判明



「新しいの買ってあげたのに。よくこれで学校行けてたわ。言えばいいのに」



本人は「接着剤でいいよ」とか言ってる



明日の就職試験に長男は



唯一クリーニングに出したスラックスと私がアイロンかけたシャツ



それに接着剤で底をくっ付けた靴を履いて就職試験に挑む