※なんか出て来た小話
(おそらく何時の年かの赤也の誕生日記念小説を書こうとしていたのだと思われる)
※未完成
※丸井先輩がヒドい
(病んでる)
※赤也が不憫
※全体的に暗い
※オチなし
―――にこにこ。キラキラ。
俺の好きな人は、太陽や向日葵といった形容がすごく似合う。
明るくて、面白くて、
喜怒哀楽の移り変わりが頻繁だけれど、
そこに居るだけで、
在るだけで、
他者の支えになれるような、なってくれるようなそんな人。
そんな人だから、必然的にたくさんの人に好かれていた。
もちろん、俺にも。
…ただ、あの人に対して抱くのは恋情であってはならない。
あの人に向ける好意は全てにおいて、
友に対する情。
他者に対する慈愛や尊敬の念。
そう言った類いの想いでないといけない。
あの人は、自分に向けられる恋情を極度に卑下していた。
そして同じく、それを自分に向ける人間も卑下し、拒絶し、自身から切り離していた。
理由はわからないけど、本人がそうなのだから他人には何も言えない。
だから俺は、恋心を抱いてからもう一年ほどになるというのにも関わらず、未だ自分の想いを告げられないでいる。
男同士というのもやはり大問題ではあるけど、
それ以前に、あの人―――…丸井ブン太は、恋愛というものに価値や意味を見出していないのだから。
誰が想っても一方通行にしかならない恋。
もはや立海(ウチ)で知らない奴はほとんどいないこの事象は、発祥し二年半ほど経ったであろう今現在においても、打開の術やその予兆なんて一切発見されていなかった。
―――これは、そんな問題を前にした俺、切原赤也の苦悩秘話である。
「はぁ〜…やっと涼しくなってきたよなー」
「俺、毎年毎年、夏が長くなって行ってんじゃないかって思うっス…」
「ははっ、俺もー。…て、まぁ温暖化が進んでるっつーんだからきっとそうなんだろうな」
「そうなんでしょーね」
なんて、無駄話も良いとこな他愛のない会話を互いに吐き出しながら、俺達はでっかい大木を背もたれにこのまったりとした時間を共有していた。
―――時刻は午後5時。
場所は海友会館付近。
海友会館は歴史の古い立海大附属(ウチ)の旧校舎ってやつで、各運動部の他校との対戦決めにもよく使われている場所だ。
まぁそれがない時は今みたいにきっちりと施錠されているわけだが、それでも生徒間では結構な比率で溜まり場と認定され今の俺達のように利用されている。
数分前までは、俺達の居る大木から横1メートルも離れていないちょっとした階段のような段差に仁王先輩が腰を下ろしていたんだけど、不意に鳴りだした自身の携帯を弄ってから少し、「柳生が呼んどる」なんて言葉を一言呟くと素早い動きでこの場を去っていった。
…まぁ、俺にとって丸井先輩が居るってのがここに居る最大の理由なわけで、しかも仁王先輩は柳生先輩とイチャつきに行ったわけで、
(例え呼び出した柳生先輩にその気がなかったとしても、仁王先輩がそうはさせないと思う)
だからその後をついて行くなんてこともなく丸井先輩と二人ヒラヒラと手を振って見送った。
仁王先輩はこっちに背を向けていたし気づいていなかったと思うけどね。
「大分涼しくなってきたとはいえ、よくベタベタ出来ますよねー…」
「そりゃ“愛の成せる技”ってやつじゃねぇの?暑いけど好きな奴とくっ付いていられるなら気にならないんだろーよ」
「……暑いもんは、…暑いっしょ、」
「だから、気にならないんだから暑いって感覚自体が弱まってるんだろぃ?」
どうしてか、なんて知らねーよ俺に聞くなって。
そう続けた先輩は、クチャクチャと噛んでいたガムをプクーと一気に膨らませ、そしてパチンと割った。
どうやらあまり興味はないらしい。
自分で切り出しといてなんだけど、俺個人としては仁王先輩の気持ちがすごくよく分かる。
俺だって、どんなに暑かろうがきつかろうが丸井先輩が許してくれるのならずっと引っ付いていたい。
当たり前だろ、好きなんだから。
それなのにこんな話題を振ったのには勿論理由があって、先輩の“病状”が今どんな感じなのか知りたかったから。
いや、まぁ正確には病気じゃないけど、病的な感覚ではあるだろうし全くの的外れとまでは言えないと思う。
そして分かったことは、少しだって良くなっていないってことだったけどな。
…何が愛だっての。
アンタの口からそんな言葉が出てくるのはオカシイだろ。
愛情なんか気持ち悪いとしか思ってないくせにさ。
「そういやお前、明日誕生日だったよな」
「そういや?!え、ちょっ、アンタ忘れてたんスか?!ひっでぇ…!」
「―――…っく、くくっ、…ははっ、バァーカ!忘れるわけねーだろぃ?覚えてるっての。冗談だよ、ジョーダンっ!」
―――大事な後輩の誕生日なんだからな。
にっ、と笑った先輩を見て、やっぱりこの人が好きだとそう改めて思う。
女みたいに大きくて、クリクリとした双眼。
睫毛だって長いしバッサバサで。
顔全体を見てみても、それは明らかに中性的と表現出来る部類のものだった。
ぱっと見は繊細そうっつーか、綺麗な作りの容姿なんだけど、その人の性格に合わせコロコロと忙しなく変化を見せる表情のお蔭か、“綺麗”よりも“可愛い”と言う括りの方に収まり易い。
背も低いしな。
つまりはまぁ女じみた見た目の人なんだけど、性格はかなり男気溢れている。
自身に小さな弟達がいる為か結構な世話焼きではあるものの、相手の心情を瞬時に悟り引き際ってもんをドンピシャなタイミングで見極めることが出来る。
だから嫌な感じなんてのはあまり受けないわけで、むしろ心地よさを感じるほどで、
俺はそんなこの人に惹かれ、その存在に対し日毎に落ちていった。
……そりゃあ落ちるってもんだろ。
俺だけに限ったことじゃない。
見た目よし。性格もまぁよし。
基本的に今は自分の為にしか活用していないみたいだが、ここだけの話かなり家庭的な人でもあるし、(家事全般はお手の物だ)異性にとってしてみれば出来ることなら手に入れたいなと考えてしまう人物だと思う。
…と、言っても、その中性的な顔立ちのせいで俺を含めた同性達からも思われているってのが現状なんだけどな。
「お前、今彼女いんの?いたら止めるけど、いないなら明日は部のヤツらで祝おうか?」
「今はいないんで、ありがたくお願いしよーかな」
「オーケー。みんなに伝えとくわ」
俺の返事を聞くなり携帯を取り出して、先輩は素早くメールを作成しそして方々(ほうぼう)に飛ばし始めた。
丸井先輩からの発信となれば、かなりの人数が集まるだろう。
そんなのは簡単に予測が出来る。
同じ部内でもいろんなヤツらがいるし、しかもテニス部(ウチ)は尋常じゃない人数を抱えているところだし、価値観やその他の相違点から必然的に合う人種合わない人種が生まれてきてしまう。
自分で言うのもアレだが俺は結構特殊な体質を保持している人間で、だから普通の人のそれよりも他人と合うかどうかってのがハッキリと浮き彫りにされていた。
全く近づこうとしてこないヤツらなんてのはたくさんいる。
だけど、そんな俺とあまり親しくないヤツらだって、
明日のプチパーティーには自らの意思で姿を現すだろう。
嫌々とかじゃなく、何の気なしに、
“これと言った予定もないし、参加してみるかな”なんてそんな軽い感覚で。
この丸井ブン太という人は、それほどまでの影響力を持っている。
部長とはまた違ったカリスマ性のある人なんだよな。
―――例えば、この提案の発信者が幸村部長だったなら、
それはそれで人数は集まるだろう。
数で見れば部長からのそれだった方が多いかもしれない。
だけどそれも、元々予定が入っているヤツらがその予定を無しにして参加するからであって、ほんのちょっとの、些細な人数差にしかならない。
そしてここで最も重要になるのが、参加する人間が感じる感覚だ。
部長からの呼び掛けならある種の部長命令と似たような感覚で仕方なく参加するヤツらが大半なのに対し、
丸井先輩からの呼び掛けでは不思議なことに少なからず楽しいものになるのではないかというような期待を抱き参加するヤツらが大半だと言うこと。
どうしてそうなるのかなんて理由は検討もつかないし、例えそれが見つかったとしても頭の悪い俺じゃ表現なんか出来るわけないけど、
とにかくこれが丸井先輩の持つ性質だった。
意図的なのかそうじゃないのか、……いや、多分後者だな。
先輩の“病気”を考えれば、人からの好意を無駄に増やそうとは思わないだろう。
友情や尊敬と言った想いに止まってくれるならいいけど、この人の場合それ以上になることの方が多いし、それくらいは本人自身も気づいている筈だ。
「彼女いなくても楽しめる誕生日って幸せっスよねー」
「ケーキとご馳走さえありゃ楽しいだろぃ、フツー」
「ンなふうに思うのなんて丸井先輩だけっスよ。フツーは恋人と一緒に過ごして通常より甘やかして貰ってそんでヤって楽しむもんでしょ」
「……エロガキ」
「そういうお年頃ですから」
会話を交わしながらチラリと伺ってみた先輩の表情は無そのもので、俺の口からは盛大な溜め息が零れ出ていく。
相変わらず末期患者だよなー…この人は。
原因も知らない俺には対処のしようもない先輩の病状。
伝えることすら許されないとか、残酷過ぎるにも程がある。
「そんなに彼女欲しいなら今からでも適当に作ればいいだろぃ。キレてないときのお前なら大抵のヤツはホイホイついてくんだし」
「俺、これでも好きなヤツじゃないと付き合えない質なんで」
「すぐ別れるヤツに言われてもな。説得力ねーよ。フラれてるならまだしも基本的にお前がフってるみたいだし」
「……よくご存知で」
「俺のクラスのヤツら、ほぼ全員お前の元カノだからな。勝手に耳に入ってくんだよ。知られんの嫌なら同級か後輩にしとけよ」
「無理。俺年上がいいっスもん」
「あっそ。じゃあせめて俺のクラスじゃない女にすれば?」
「んー…でも先輩のクラスの人達レベル高いしなー…」
「………そうか?」
俺の言葉にクラスメイトの面々を思い浮かべているのか、先輩は少し考える素振りをしてから小首を傾げる。
…くそぅ、可愛い。
ちなみに、俺が言ったことはまるっきり嘘ってわけじゃない。
丸井先輩のクラスの女子がハイレベルなのは本当だし、丸井先輩が好きなわけだから俺が年上好きだってのも本当だと言える。
ただ、“好きなヤツとしか付き合えない”と言ったことだけは嘘とも言えるし本当とも言える。
俺としても、それなりに見た目や性格が良くないと付き合いたくないし、だけどそんな人達だって丸井先輩と比べればどの人間も似たり寄ったりっつーか、みんな同じサイズの好意っつーか、
そういう意味で考えると、俺は大して好きでもない人間とも付き合えていると言えるだろう。
「そうか?って、先輩の美意識どうなってんスか。そりゃあ一生懸命作ってますって感は否めないでしょうけど、読モ以上のレベルなのは間違いないっスよ」
「……読モレベル、ねぇ…」
「そもそも、先輩のタイプってどんな子なわけ?あれ以上ってなると、もう芸能人ぐらいしかいないじゃん」
なんてことを言ってはみるけど、聞いてみたところで先輩からどんな答えが返ってくるのかもう十分思い知っている。
不本意ながらも分かり切っていた。
案の定、丸井先輩はいつか聞いたものと同じ言葉を吐き出し始めて…。
「―――俺のこと、嫌いなヤツが好き」
「………報われないよ、それ」
「そうだな」
「つーか、アンタのこと嫌いなヤツとかいないだろ」
「ンなことねぇよ。探せばどっかにいる」
「そりゃあそうかもしれないけどさ、少なくとも俺は、立海(ウチ)の生徒間でアンタのこと嫌ってるヤツなんてみたことないよ。いつだか忘れたけど柳先輩もそんなこと言ってたし」
「………」
「贅沢な考えにもほどがありますって。好かれたくないなんてさ。大体、嫌われたいなら嫌われるよう振る舞えばいいんスよ。それをしないでそんなこと言うなんて…」
「お前、俺のこと嫌いなのか?」
「………」
確かに、苛立ち始めていたことは認める。
こんな意味のない会話なんか続けるだけ無駄だし、先輩の思考回路はいつも通り重症だし、
人の気も知らないで…とムカついてきてしまうのは仕方がない。
けど、そんなんで“嫌い”になるなんてのは浅はか過ぎる考えだ。
「嫌いじゃないっスよ。残念ながら」
「くくっ、残念なのかよ」
「あぁでも、こんな会話してるときのアンタはウザいんで正直嫌いですね」
「そうだろうな」
「………知ってるなら止めてくださいよ」
「つーかお前から振ってきたんじゃねぇか」
「いや、まぁそうだけど…適当に流すとかさ…」
「お前、さっき自分で言ったんじゃん。嫌われたいなら嫌われるよう振る舞えって」
「?!、…ちょっ、でも俺―――」
「お前、一度嫌ったらスッゴい憎悪向けてくるよな、絶対。楽しみー」
「………」
それについては反対も言えるんだと、この人は分かっているんだろうか。
徹底的に好きになっている今、憎悪も好意に変換されるくらいのレベルでアンタを想ってるって言うのに。
例え仮に、先輩を嫌ってくれる人間が見つかったとして、それは絶対、俺じゃない。
だけど、この人が一度決めたらなかなか折れない人だってのは分かっているから、結果がどうあれ過程ではそれを示してやらなきゃならないんだろう。
全く、なんで俺が…。
「なぁ、…お前、何されんのが嫌い?」
「知りませんよ」
寄りにもよって俺を標的にするとはなー…。
“嫌い”は悟られてもいいのに“好き”はダメなんてカオス過ぎるだろ。
普通逆だっての。
「―――?!、…んっ、」
「…っは、……気持ち悪いか?嫌いになったか?」
「………」
そっぽを向いていた俺の胸倉を掴んで、先輩はその唇を俺のと重ねてきた。
触れるだけだった幼稚なキスでも、俺にとっては十分なほど幸福な事象だった。
隠していた好意をつい匂わせてしまうくらい、素直に嬉しくて…。
「赤也…?」
「―――…っ、…気持ち悪いんで、洗ってきます」
手の甲でゴシゴシと口元を拭いながら立ち上がる俺。
俺が嫌われるのは簡単なんだってこと、ほんの少しでも忘れるわけにはいかない。
……あぁ、でも、
くそ…っ、すっげぇ勿体無いことした…!
近くの洗い場へと駆けながら、拭わなければいけなかった口元を思い内心で呻く。
あーあ、…恋人同士なら、あんなことされれば瞬時に先輩を押し倒して好きだって想いを存分にぶつけることが出来るのに。
…つーかバレたか?
あの人、こういうことに敏感だから上手くいったかどうか自信ない。
「…ま、嫌われてもそれで終わりじゃないけどな」
そんな狂気じみた呟きは、俺以外の誰かの耳には届かなかった。
居なくなった赤也がさっきまで座っていた場所を眺め、俺の思考はカチカチと仕事を始める。
まるで頭の中にパソコンでも埋め込まれているみたいに、これからとる行動のまとめが文字を打ち込むようにして組み立てられていった。
けど俺はこれからよりもさっきまでを振り返りたくて、
同じように組み立てられ残っていた思考を、脳内でゆっくりとなぞり読んでいく。
切原赤也。後輩。
可愛い。弟みたい。
ワカメ。悪魔。
嫌われてみたい。
どうすればいいのか。
キスしてみようか。
嫌がるだろうか。
キスしてみる。
嫌だっただろうか。
赤也は俺のこと…。
「………」
……俺のこと、
好きらしい。
あれは十中八九、
俺が求めていない“好き”だろう。
さっきまで此処にいた赤也も、
出会ってから今までの赤也も、
記憶の中の赤也達が、
全部、全部、……黒く塗り潰されていく。
「……気持ち悪い、」
吐き気すら込み上げてくるほどの悪寒と、視界が滲むほどの眩暈。
さっきまでは鮮やかだった大切な思い出達が、俺の意志に反して真っ黒になってしまう。
―――…変だ。
オカシイ。
俺の方が気持ち悪い。
…わかってる。
けど、なのに…。
「…気持ち悪い、」
―――赤也が。
(丸井先輩おまたせしましたー…―――って、いねぇしっ!……まぁけど、いないってことは“そういうこと”なんだろーね)(気持ち悪い、気持ち悪い、)(そりゃバレるよなー…丸井先輩だし)(気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い)(俺じゃなかったらもうルート自体消滅してるな、これは)(気持ち悪いっ、赤也、怖いっ、気持ち悪い、こえーよ…!赤也、気持ちわりぃよ…っ!俺っ、助けて、)(やっぱ病気だよ、先輩。…うん、病気病気。―――俺もだけどさ)
end.
*********
病気ですね。←
病気じゃない設定だけど
明らかに精神の病気ですよ、これは。
一応何故だか先輩も赤也のことラブ的に好きなんですけど、
好きになられるともうダメらしいっす。
精神的な問題で。
赤也不憫すぎる(^^;)赤也に異常な愛がなければ
嫌われた瞬間から心が折れて先輩には近寄れません。
だって汚い話になりますけど相手吐きますからね。
近寄ったらリバースですからね。
普通の人は自らの手で泣く泣くルート変更しますよ。
赤也はしませんけど。(ドヤァ)
赤也も病気だよこれ。ハッピーエンドは捨てて
バッドエンドに向かってます彼は。
アタシの脳内での二人は狂気ルートで『監禁エンド』を迎えていました。
先輩もどんまい!でも仕方ないね!
続きは18どころかR指定20な気がするし、誕生日ネタにしては暗すぎたので止めたのを読んでいて思い出しました/(^^)\←
気が向いたら書くかもしれないけれどとりあえずは
社会復帰して先輩の誕生記念小説アップしてからだな、何事も。
気分悪くされたら
すみませんでしたっ