修学旅行の引率中、家族からLINEがきた。
「ペット(犬)の体調が悪化して、今夜が山場かもしれない」
それを見た瞬間、思考が止まった。
でも、仕事だからと気持ちを切り替えた。大丈夫だと信じて、仕事を全うした。

でも、その2時間後、亡くなったと連絡がきた。

その連絡が来る前にLINEがきていたとも電話が鳴っていたとも気づかず、仕事をしていた。修学旅行の引率は24時間仕事をしているのと同じだ。少なくとも生徒の点呼の時間までは私用でスマフォはいじれない。

生徒の点呼後、スマフォを見て、唖然とした。そのあとはよく覚えていないけど、悲しいとか悔しいとかの気持ちはなかった。
ただ、ラインが送られた時間を観ると、妹や母が臨終のときを察して、ラインや電話をたくさん入れていた。私は仕事をしていて何一つ出れなかった。
それを知り、1人でいると耐えられずに泣き出してしまいそうだったから、ラインの通知を一切切り、2時まで生徒の見張りをずっとしていた。気がついたら寝ていた。起きたのは5時だった。
もう一度スマフォを見た。亡くなったことを知らせるラインは本当にあった。事実だった。
犬が棺桶に入って、花が添えられている画像が送られていた。
そこにいる愛犬は、死んでるとは思えなかった。
また涙が出てきそうだった。

歳だったし、いつきてもおかしくなった。だから、亡くなったことはしょうがないし、家族に囲まれて、だいすきな祖母に抱かれて逝ったようだったので、それは良かったと思う。

でも、なんで、
なんで、臨終のときの電話に出れなかったんだろう。
なんで、最後の挨拶ができなかったんだろう。

そればかりが頭をぐるぐる回って、気分が重い。
最後に言いたかった。
「そばにいられなくてごめんね」

「ありがとう」

なんでもいい。最後に立ち会いたかった。

明日で家に帰れる。家に帰って遺体に会いたい。でも、会ったら亡くなったことが事実になってしまう。帰りたくない。

苦しい。